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経済の「止血」を優先 消費税減税見送りで小粒に 与党の税制支援策

 2日にまとまった新型コロナウイルスの感染拡大に対応する与党の税制支援策は、企業の資金繰りを支援することで倒産を防ぐ“止血”としての色合いが強く、大胆な減税には踏み込まなかった。ただ、感染拡大の長期化が現実味を帯びる中、経済への打撃がどこまで広がるか現時点で十分推し量れない。政府・与党は2の矢、3の矢を求められることを覚悟し、通年で支援に取り組む必要がある。

 今回の税制支援では、与党の一部から要望が出ていた消費税率の引き下げは見送られた。ラインアップには納税猶予など小粒な措置が並び、迫力不足という印象は否めない。安倍晋三首相は「財政、金融、税制を総動員して思い切った措置を講じていきたい」と表明しているが、税制面でどこまで徹底できたかは疑問だ。

 一方で、幅広く手厚い企業支援を実施すれば、経営改善の見込みのない「ゾンビ企業」の延命を助長しかねないリスクも抱える。実際、リーマン・ショック後の平成21年に中小企業金融円滑化法を施行して資金繰りを支援した結果、倒産件数が激減した半面、再編などの企業改革を遅らせ、生産性の低い中小企業を生き残らせた。

 消費喚起を図る大胆な減税を打ち出さなかったのも、感染収束のめどが立たないうちに実施すれば消費者の濃厚接触の機会が増え、かえって感染拡大につながりかねないからだ。「“嵐が去るまで耐える”税制」。大和総研の是枝俊悟研究員がこう表現する今回の税制支援は、政府・与党の慎重姿勢のあらわれでもある。

 例年秋から年末に翌年度の税制改正を協議する与党税調にとって、今回のように臨時会合を開き、短期間で税制措置をまとめるのは極めて異例だ。「与党税調も経済対策の編成のスピードを上げて取り組んでいきたい」。自民党の甘利明税調会長は先月26日の会合後、こう述べ、感染拡大の影響が長期化した場合には再度、臨時会合を開いて対応する考えを示唆した。経済の回復時期が見通せない現状において、今後は即効性のある大胆な税制措置も求められそうだ。(林修太郎)

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