海外情勢

「安保危機の回避へ対話を」 台湾政治大・東亜研究所 王信賢所長

 台湾独立志向の民主進歩党(民進党)、蔡英文総統による1月の再選と新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中台関係はどこに向かうのか。台湾政治大・東亜研究所の王信賢所長は台湾人の「反中」意識が極めて高まっていると指摘。緊張を安全保障の危険レベルまで深めないため双方が言動に注意し、対話を探る必要があると指摘した。

 --「反中」はなぜ高まったのか

 「中国の習近平国家主席が昨年1月に『一国二制度』による台湾統一を提示したことと、民主化を求める香港の抗議活動に対する弾圧を受け、台湾人は『共産党統治の現実』を強く認識した。民進党はその状況を利用して、『統一か独立』という対中政策の問題を『民主か独裁か』に代えて国民に問い掛けることで、総統選で勝利した」

 「そこに感染症騒動が発生した。中国で起きたにもかかわらず『中国は世界の感染防止に貢献している』『世界は中国に感謝すべきだ』と主張していることを道徳的に全く受け入れられないと反発。民意を反中から引き戻すのは難しくなった」

 --習指導部は蔡政権をどう見ているか

 「中国へのマスク輸出禁止に反発している。蔡政権が感染を利用し、外国の支持を取り付けて独立を図ろうとしていると不信感を強めている」

 --中国は武力統一に踏み切るか

 「2000年以降、民進党が総統選で複数回勝利したことで、中国は国民党を頼りにできず、台湾市民に対する懐柔も限界があると認識。経済力を唯一の武器に統一を図ろうとしてきた。今後、鍵となるのは24年の総統選。民進党がまた圧勝し、平和統一の可能性が消えたと判断した際に武力に訴える恐れがある」

 --蔡政権はどう対応するべきか

 「感染症騒動は中国との対話の糸口を探るチャンスでもある。戦略的に共産党と中国人を区別するべきだ。中国人が台湾に憧れや希望を見いだすことが、安全保障において、台湾を守るベストのやり方だからだ」(台北 共同)

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 1970年生まれ、基隆市出身。台湾政治大博士。2017年8月から現職。専攻は比較政治学、中台関係。

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