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ウイルスとは共存する相手 最善の備えが次の不適応にも  (2/4ページ)

 --新型コロナウイルスがまたたく間に世界に広がったのは、グローバル化が原因でしょうか

 「100年前のスペイン風邪の時代は船と鉄道が主な移動手段で、世界に広がるのに約6カ月かかりました。ところが今回は地球をぐるっと回っていくというより同時多発的で東京、ロンドン、ニューヨークなど大都市でバンバンバンと起きた。人の移動の量も速さも以前とは全く違うレベルになっているからです」

 「サーズの感染は発熱など症状が出たあとだったため、海外の国々は水際での対策がしやすかった。今回のコロナウイルスは無症状のひとからも感染が拡大したため、われわれにとっては都合が悪かったのです」

 --ウイルスは人間の弱みを突いてくるようです

 「ウイルスが弱みを突くのではなく、むしろわたしたちの社会が流行するウイルスを選ぶのだと思います。常に多くのウイルスが人間社会に定着しようとしていますが、社会の特徴が流行するウイルスを決める。仮に1000年前の人口がはるかに少ない社会だと、今回のような人が密集して感染が急拡大するウイルスは流行しにくい。社会のありかたが違えば流行するウイルスも違うのです」

 「がんや心筋梗塞といった病気と違い、ウイルスによる感染症の拡大は人と人の接触やネットワークといった要因に左右される。感染症は社会的な病気といえるでしょう。ウイルス拡散の抑制にしても、自分ひとりの努力ではどうにもならない部分があります」

 --社会全体を巻き込む戦争のようでもあり、欧米指導者らは「見えない敵との戦い」などと表現しました

 「戦争に例えるのはどうでしょうか。ウイルスを消滅させることが勝利だとすれば、恐らくいつまでも勝利はないでしょう。むしろウイルスとはつきあい、共存していく相手だと考えたほうがいいと思います」

 「20世紀なかば、医学や公衆衛生の進歩で人類は感染症との戦いに勝利しつつあるといった楽観論が広がったことがありました。世界保健機関(WHO)は何千年にもわたって人類を苦しめた天然痘ウイルスの撲滅に取り組み、1980年についに根絶を宣言した。ところがその後、エイズやエボラ出血熱といった新しいウイルス感染症が明らかになりました。現れるウイルスに戦いを挑み、撲滅を目指すという考え方は現実的でないように思います」

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