国内

米景気見通し、強弱交錯…失業率改善に「底打ち」「一時的」

 【ワシントン=塩原永久】米労働省が5日発表した5月の雇用統計(速報、季節調整済み)で、失業率が13・3%と前月から1・4ポイント改善した。就業者数も3カ月ぶりに増え、新型コロナウイルスの悪影響を受けた雇用悪化が「底を打った」との指摘も出ている。一方、就業者の増加は「一時的な反発」に過ぎないとの慎重な見方も根強く、米経済の先行きには強気と弱気が交錯している。

 「史上最大の復活劇だ」

 トランプ米大統領は統計発表後、急遽(きゅうきょ)、記者会見を開いてそう述べ、経済活動の再開につながった感染対策の取り組みを自賛した。

 米経済団体によると、5月下旬には中小企業の79%が事業再開に乗り出した。感染対策の営業規制が緩和され、一時的に解雇された人の職場復帰が進んだとみられ、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前月から250万9千人増えた。そのうち感染対策の大打撃を受けた外食では約140万人の増加だ。

 4月の就業者数は減少幅が2千万人を超えたが、5月に歯止めがかかった要因には、政府の大型経済対策があったとみられる。外食や宿泊を中心に、雇用規模を維持すれば返済不要となる特例融資の利用が広がり、こうした業界で再雇用が進んだもようだ。

 日米欧の主要国が経済再開に踏み出し、「世界経済を巻き込んだ厳しい景気悪化は5月に底を打ったかもしれない」(ムーディーズ・アナリティクスのザンディ氏)との声も出ている。

 一時は失業率が約25%となった1930年代の「世界恐慌」並みの雇用悪化も予想されたが、経済対策の政策効果が雇用の崩壊を押しとどめた形だ。一方、失業率は依然、2桁台で高止まりしている。米ピーターソン国際経済研究所のファーマン氏らは、仕事がないのにもかかわらず、失業者に算入されなかった統計上の誤差を補正すると、「真の失業率」は17・1%だったと分析。「失業率は当面、不況時の水準が続く」と指摘する。

 失業保険給付の拡充など、一部の政策は適用期限が近く終了する。「政策効果が薄れれば、本当の雇用悪化の程度が表れる」(エコノミスト)との見方もあり、米景気の「V字」回復は容易ではない。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus