海外情勢

EU、中国の貿易戦略牽制 政府補助金に関税賦課

 欧州連合(EU)は15日、中国政府による国外の輸出業者向けの補助金制度を標的とした異例の関税を発表した。これまでは、自国内の輸出業者に対する補助金のみを問題としていたが、他国を本拠とする輸出業者への政府補助金は市場をゆがめるとして関税賦課を発表。中国が目指す世界的な貿易戦略を牽制(けんせい)した。

 関税を課されるのはエジプトから輸入されるガラス繊維織物で、風力タービンからスポーツ用品まで幅広く使用されている工業製品。標的となったエジプトの輸出業者2社は中国巨石集団と浙江恒石繊維基業の子会社で、ともに中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環である中国・エジプト・スエズ経済貿易協力区に本拠地を置いている。

 EUによると、この2社は中国とエジプト両政府から金銭的補助を受け取っている。こうした支援は、中国から直接出荷されるガラス繊維織物への補助金と相まって、欧州市場におけるEU域内生産者の競争力を不当に弱めるとEUは主張した。

 EUの行政執行機関である欧州委員会は欧州連合官報で「域内生産者が実質的な損害を被っている」と訴えた。域内にはアールストローム(フィンランド)、ヨーロピアン・オーウェンス・コーニング・ファイバーグラス(ベルギー)、ショマラ(フランス)などがある。

 調査会社ロジウム・グループでEUと中国の関係や中国の商業外交の調査責任者を務めるアガサ・クラッツ氏は「画期的で、さらに多くの類似した事例につながり得る。中国による国家支援は実際、国外で広く見受けられ、EUや他国の利害関係者の(貿易を)歪曲(わいきょく)する効果をもたらしている」と説明した。

 中国側は世界貿易機関(WTO)の協定違反だと激しく非難している。EU駐在の中国使節団は「中国側は今回のEUの決定を非常に憂慮している。WTO協定の権威や多国間貿易の体制維持に向けた全当事者の取り組みを維持する助けにはならず、通常の投資フローやサプライチェーン(供給網)を途絶し、発展途上国の利益を損なう」と断じた。

 欧州は中国の拡張的な商業政策への警戒を強めている。WTOの枠組みにとどまる意向を示す半面、バランス政策の一環で中国の経済的な台頭を懸念する米国に同調している。一方、米政府はWTOを回避した方法で中国政府に一方的措置を講じ、欧州側の批判を招いた。

 欧州のガラス繊維織物生産者の業界団体、テックファブ・ヨーロッパは、中国とエジプトに拠点を置く競合会社に対するEUの新たな関税を歓迎し、「外国の補助金制度に対抗する、EUの貿易防衛手段の新たな時代を告げる」ものだと述べた。(ブルームバーグ Jonathan Stearns)

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