海外情勢

東南ア貧困層、コロナ禍で八方塞がり 比「庶民の足」日雇い運転手失業

 新型コロナウイルス禍による経済活動の停滞が、途上国の貧困層を直撃している。フィリピンやインドネシアでは、ほそぼそと日銭を稼いできた人たちが仕事を失い、物乞いに転じることも。「少しでもいい。恵んでくれ」。コロナ流行の収束が見通せない中、生活のため人混みの中で働かざるを得ない人も多い。

 物乞い始めるしか…

 3月中旬に厳しい外出制限を導入したフィリピン・マニラ。5月下旬、高層ビルが林立する金融街の一角で、20代のジャーミーさんはコンビニの出入り口に立ち、手動ドアを開け閉めして客にチップをねだっていた。

 トライシクル(バイクタクシー)運転手として日銭を稼いでいたが、感染抑止策としてトライシクルを含む公共交通機関の運行が禁止され、仕事を失った。蓄えはほとんどなく「1歳の娘を育てるために物乞いを始めるしかなかった。何か仕事を紹介してくれ」とすがるように語った。

 マニラ中心部の裏通りでは、10歳くらいの男の子が座り込んでいた。感染拡大で親が失業し、路上生活を始めたという。

 政府によると、国内の失業者数は1月現在で約240万人だったが、外出制限に伴う経済活動の停滞で4月には約730万人に急増。失業率は17.7%に達した。

 一部の閣僚や首長は「経済がもう持たない」と主張。政府は制限緩和にかじを切り始めたが、子供と高齢者の外出は原則禁止で、食堂では店内飲食が認められないなど、コロナ前の状況とは程遠い。

 マスク着用 余裕ない

 インドネシアでも失業問題が深刻化。労働省によると、国内の失業者は少なくとも約173万人に上り、うち約32万人が露天商や廃品回収といった日銭を稼ぐ職種だ。政府は「新しい日常」として屋外でのマスク着用や検温などを義務付けているが、生活に追われる庶民にその余裕はない。

 「金があったら家で寝ていたいよ。でも働かなければどうやって食べていくんだ」。首都ジャカルタ南部のクバヨラン・ラマ市場で玩具を売っていた20代のアディティアさんがまくし立てた。コロナ禍で、収入は以前の6割程度に減った。

 イスラム教の祈りの音声がスピーカーから流れる市場は買い物客でごった返し、マスクを着けない客や売り子も多い。

 政府は失業者や貧困世帯に対し、現金や生活必需品の支給を始めたが、住民データの把握が不十分なため支援が行き届かない。アディティアさんは「コロナは怖いが、家にこもっていても死ぬだけだ」と訴えた。(マニラ、ジャカルタ 共同)

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