海外情勢

差別反対、従業員の声が力 「ジューンティーンス」有給の動き拡大

 信じられないと、デラニー・ウェストさんは語る。かつてはキング牧師生誕記念日に休暇を取ることさえ後ろめたく思っていたが、事実上の米奴隷制度廃止を記念する「ジューンティーンス」(6月19日)を有給の休日とする動きが米企業の間で広がったことに驚嘆を隠せない。

 社会変化促す存在

 ニューヨークの人材エージェンシー、ブラック・クリエーティブの最高戦略責任者であるウェストさんは、「黒人コミュニティーの外で広く受け入れられるようになったことに衝撃を受けている」と語った。それでも企業がそうしたジェスチャーにとどまらず、アフリカ系米国人の採用拡大や幹部レベルへの昇進といった中長期的な行動に移せるか見ていきたいとも述べた。

 スポーツ用品メーカーのナイキやディスカウントチェーンのターゲットなど数十社は、6月19日を有給での休日とした。また銀行大手JPモルガン・チェースは支店の閉店時間を早め、バンク・オブ・アメリカ(BOA)やシティグループは、従業員に休暇の取得を認めた。自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)やフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)では黙祷(もくとう)の時間が設けられた。

 5月25日にミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行で死亡。この事件を受けた抗議活動が世界中で広がっていることを受け、社会に変化を促す存在として認識されたいと企業が考えていることがうかがえる。

 企業評価を手掛けるクラッチのクリステン・ハーホールド氏は、ジューンティーンスを休日とする対応が広がったのは、雇用主に行動を求める従業員の声が原動力になったと語る。クラッチが750人余りを対象に6月5~7日に実施した調査によれば、従業員の約62%が人種差別反対を訴える活動を支持しており、55%は雇用主は人種問題に直接対応すべきだと考えている。

 職場で率直に語る

 ハーホールド氏は「考え方が完全にシフトした」と指摘。「抗議活動や人種差別・ダイバーシティー(多様性)全般に端を発する問題ついて、従業員がこれほど率直に職場で話すことなどこれまでなかった」と述べた。

 ブランド戦略会社シーゲルゲールのハワード・ベルク共同最高経営責任者(CEO)は、ジューンティーンスに対する認識の深まりは多くで歓迎される一方、企業は採用やベンダーの多様性といった面で具体的かつ目に見える変化をもたらすための資源を投入しているかどうか、国民の厳しい目が向けられることになると語る。

 「企業がそうしたコミットメントのシグナルを発するには、まず最高レベルの幹部が動くことが重要だ。そうでなければ、すぐに中身のない形だけのものに聞こえてしまう」と指摘。ただ祝日としただけで、そのほかがこれまで通りならばマイナスの結果にもなり得ると語った。(ブルームバーグ Lananh Nguyen、Tiffany Kary)

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