海外情勢

コスメ業界は人種差別に“鈍感” 経営陣ほぼ白人、文化形成にも批判

 人種差別に対する抗議の矛先が企業経営陣にも向けられ、世界中の企業がかつて経験したことのない厳しい人種差別的行為の清算に追われている。こうした環境変化に、かねて対応のまずさが際立っていた化粧品業界は、経営陣をほぼ白人が占め、「理想の女性美」という文化形成を主導してきたこともやり玉に挙げられている。

 従業員が辞任迫る

 抗議デモの広がりを受け、米化粧品ブランドの多くはまずソーシャルメディアを通しデモを支持する短いメッセージを発表した。だがナイジェリア出身で化粧品会社、ウオマビューティー創立者のシャロン・シューターさんは、これに納得できず、化粧品業界全体に実質的な行動を求め、手始めに自社の黒人従業員の割合を公表した。これが奏功し、コティやエスティローダー、レブロン、仏ロレアルの米部門などの米化粧品大手各社がこれに追随した。「業界を大きく変えるために必要な一手だった」とシューターさんは話す。

 このほか米出版大手コンデナストやフィットネス団体のクロスフィット、女性向けのコワーキング(共働)スペースを運営するザ・ウイングなどで、デモに触発された従業員が役員の差別的行為を摘発し辞職に追いやるケースも出た。

 一方、米金融大手ゴールドマン・サックスや米スポーツ用品のナイキなどは、抗議デモを牽引(けんいん)する社会運動「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は大切)を擁護する方針を発表し、人種差別をなくす活動に数百万ドルの寄付や、マイノリティーの採用を増やすことを誓約した。米企業が人種問題について熟考する機会は過去にもあった。今回はデモに対する反響の大きさから、従来と異なる持続的な行動変化をもたらす可能性がある。

 半面、エスティローダーでは6月初旬に100人を超える従業員が抗議デモに対する同社の対応を非難したうえ、同社と黒人社会の関係を悪化させたとして後継者の一人、ロナルド・ローダー氏に役員辞任を迫った。同社は、黒人の雇用を増やし5年以内に組織全体の黒人従業員の割合を人口比と同じにすると回答。また、黒人が経営する企業からの調達を倍増し、人種差別撤廃を目指す組織への寄付を100万ドル(約1億728万円)から1000万ドルに拡大することも約束した。

 ただ、ローダー氏はいまだ辞任せず、化粧品業界の取締役会メンバーの多様性は低水準のままだ。会計事務所のデロイトが2019年に実施した調査では、北米と欧州の化粧品主要10社の取締役会で有色人種が占める割合は約13%と、米大企業全体の平均16%を下回る。また役員構成で最も多様性に富む三十数社に化粧品関連企業の名はない。

 低水準続く多様性

 さらにブルームバーグによると、抗議デモ開始以来、全業種から全米黒人地位向上協会(NAACP)やブラック・ライブズ・マターなどへの寄付の誓約が11億ドルを超える中、化粧品業界からは約2000万ドルにすぎない。

 同業界はさらに、広告や雑誌で起用するモデルの多様性が低く、これを見る消費者に何が美か、そうでないかを数十年にわたり植え付けてきたことにも批判が強まっている。

 ウィスコンシン大学マディソン校のサミ・シャーク教授は「化粧品業界で黒人が影響力のあるポジションにつけない中、業界は長年、一貫して黒人の肌色や髪は良くないから変える必要があると伝え続け、有色人種の存在を否定してきた」と指摘する。(ブルームバーグ Kim Bhasin、Gerald Porter Jr.)

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