インタビュー

法政大学教授・小黒一正さん 国債発行、償還とセットで議論を

 □法政大学教授・小黒一正さんに聞く

 --政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度における第2次補正予算を決めた

 「当初予算、第1次補正予算と合計すると歳出が約160兆円となり、財政赤字は76兆円超と大きな額に膨らむ。補正予算は国債発行でまかなうため、結果的に国債の(民間金融機関に売却する)市中消化分は当初計画から1.5倍以上に膨らむ。日本銀行が国債の買い入れ枠『年間約80兆円』という上限のめどを撤廃したので、今のところ、市中で消化することは可能だろう」

 --しかし、財政悪化に歯止めがかからない

 「政府が最終的に償還しなければならない国債の量が減るわけではない。政府が発行した国債を一度市場で吸収してもらってから、日銀が買う流れになっている。だが、市場が『もうさすがに国債は買えません』という状況になったとき、国債発行政策は行き詰まってしまう。今後も無尽蔵に国債償還ができると考えるのは難しい」

 --新型コロナ感染拡大の第2波も懸念される

 「もちろん非常時なので、政府が新型コロナ対策として家計や企業を支援することは必要だ。それでも、政府は経済コストを長期的にならす対策を取る必要がある。日本は先進国の中でも最悪の財政状況だ。国債償還の枠組みを、国債発行とセットで考えるべきだ」

 --具体的には

 「例えば、東日本大震災のときは、復興財源を調達するため、政府は『復興債』を発行した。また、所得税の2.1%上乗せ(25年間)や、個人住民税の年1000円上乗せ(10年間)といった枠組みを作った。今すぐ課税すべきという話ではなく、新型コロナが終息した後に、こうした財源を確保するためのスキームを実行すればいい。今回、こうした議論がないことが、財政規律に大きな影響を与える」

【プロフィル】小黒一正

 おぐろ・かずまさ 京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年大蔵省(現財務省)入省。一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

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