国内

電子図書館、“密”回避で盛況 開設自治体5%、普及の契機

 公共図書館での電子書籍の貸出件数が急増している。新型コロナウイルスの感染が広がる中、図書館に出掛けずに借りられる利便性が理由。電子書籍を扱う「電子図書館」を持つ自治体は全体の5%にすぎず、関係者からは新型コロナが普及の契機になるとの声も上がる。

 緊急事態宣言が出ていた4、5月が特に顕著で、図書館運営最大手の図書館流通センター(東京)によると、78自治体が利用する同社の電子書籍貸し出しシステムで、5月の貸し出し実績が前年同月比5.3倍の8万5392件だった。6月以降も前年を上回る傾向が続いているという。

 同社は「4月ごろからサービスへの問い合わせが急に多くなった。コロナを受け、導入を検討する自治体が増えたようだ」と驚く。紀伊国屋書店(東京)が運営するシステムを導入している徳島県立図書館では3~5月の電子書籍閲覧数が前年同期比3.5倍だった。

 2007年に電子図書館を開設した東京都千代田区でも今年4月は電子書籍の貸出件数が前年同月の5.9倍に達した。5月も3.8倍、6月3.3倍、7月2.3倍と高水準を維持した。

 4月に公共図書館でのサービスを始めた福岡県行橋市の担当者は「導入は数年前から計画していたが思わぬ形で感染対策にも役立った」と喜ぶ。

 印刷会社などでつくる電子出版制作・流通協議会によると、4月1日時点で電子書籍の貸し出しを行っている自治体は約90。システム導入や維持管理にかかる費用が普及を阻んでいるという。同協会は導入が進めばコストは徐々に低下すると説明し、「若い世代は電子書籍を読むのに抵抗感が薄い。コロナの感染拡大でニーズは高まっており、普及が各地で急加速する可能性がある」と話した。

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