海外情勢

米と台湾が新たな経済対話の開始に合意 「対岸」の脅威阻止へ関係強化

 米国と台湾は8月31日、毎年高官レベルで行う「経済・商業対話」の開始で合意した。「一つの中国」の原則を掲げる中国と米国との貿易協議などへの影響が注目される。

 米国の対台湾窓口機関である米国在台協会(AIT)の声明によると、新たな経済対話は、優先課題全般で米台経済関係の強化に向けた基盤とすることが狙い。優先課題として、ハイテク・医療製品のサプライチェーン再構築、投資審査と知的財産権保護の強化、インフラ・エネルギー分野での協力拡大などを挙げている。

 台湾の王美花経済部長(経産相)は声明で台湾と米国は感染症のパンデミック(世界的大流行)対策やサプライチェーン協力の分野で、また貿易協定を結ぶことで関係を強化できると指摘した。米国側のトップはクラッチ国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が務める。

 食肉輸入で譲歩

 この発表を前に、台湾の蔡英文総統は先月28日、米国産の豚肉・牛肉輸入に関する制約を来年1月1日付で解除すると発表していた。台湾は最も域内で消費量の多い豚肉について、脂肪を抑えて赤肉量を増加させる肥育促進剤「(塩酸)ラクトパミン」の使用を禁止していたが、ラクトパミン残留量の安全基準を設定し、基準値以下なら輸入を認める。牛肉については、BSE(牛海綿状脳症)対策を理由に月齢30カ月以下に限定して米国産品の輸入を認めていたが、月齢30カ月以上のものの輸入を解禁する。米国との自由貿易協定(FTA)交渉入りに向け、長く障害とされてきた問題に決着をつけた。

 蔡総統は米国とのFTA締結にはなお時間がかかるとした上で「貿易協議に入る前に、われわれは貿易規制を合理化して国際基準に合わせ、相互利益のために他の国や地域に開放しなければならない」と説明した。

 ポンペオ米国務長官はツイッターで、「今回の動きは米台間のさらなる経済面、通商面での協力に道を開くことになる」と述べ、蔡総統のリーダーシップをたたえた。

 台湾は中国による侵攻の脅威を阻止し、世界の舞台で台湾政府を孤立させようとする中国の取り組みを弱める上で米国を当てにしている。蔡総統はトランプ政権から立て続けに、かつてない外交、安全保障上の支援を得ているが、農畜産物の輸入制限もあって、これまで2者間貿易協定締結に向けた進展はなかった。

 孤立回避へ支援期待

 「一つの中国」を唱え、台湾を領土の一部と見なす中国は、米国による台湾への武器売却などの申し出を批判してきた。中国政府は、主権国家を代表していると主張する蔡総統について、台湾独立を正当化しようとしていると非難している。

 蔡総統の前任者、馬英九政権時に台湾は中国との「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」に署名し、500以上の台湾製品の関税を引き下げた。

 野党・国民党は再三にわたり、ECFA署名10周年を迎える来月、中国が同協定を終了する可能性があるとの懸念を訴えている。中国商務省の高峰報道官は「両岸の相互交流と協力を妨げ、損害を与えた」と蔡総統率いる民進党を非難した。

 台湾にとって、ECFAという中国との画期的な貿易協定の継続に疑問符が付く中で、米国との新たな貿易交渉入りが見込まれる。台湾の閣僚は8月28日、中国側からECFA解除の方針を示す通知は受け取っていないとして、ECFA終了をめぐる懸念を重視していない。

 ただ、ホワイトハウスが注意を払う11月の米大統領選挙など、米台協議進展の新たな障害となるものは複数ある。トランプ政権は台湾との貿易交渉が、はるかに市場規模の大きな既存の対中貿易協議に過度な混乱を招くことがないよう配慮する可能性が大きい。(ブルームバーグ Miaojung Lin)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus