海外情勢

中国勢の「爆買い」裏目 シルク・ドゥ・ソレイユなど国外資産の損失膨らむ

 かつて海外資産の買収を積極的に進めた中国企業が新型コロナウイルス危機で困難に直面している。国外で「爆買い」を繰り返した海航集団(HNAグループ)など中国企業の一部は危機前からすでに混乱に陥っていたが、コロナ危機で買収対象となった企業が資金難に陥ったことで、健全な買い手企業にまで打撃が及んでいる。

 危機前の計画も支障

 カナダのサーカス運営会社シルク・ドゥ・ソレイユ・エンターテインメント・グループは事業再生を申請。2015年に同社に投資した復星国際は出資分を全て失う可能性がある。プライベートエクイティ(未公開株、PE)投資会社のホニー・キャピタル(弘毅投資)が保有する英ピザエクスプレスは8月、経営権を債権者側に譲渡する公算が大きいことを明らかにした。

 海航が15年に買収した空港サービス事業のスイスポート・インターナショナルも投資家と救済策について交渉しており、海航は手を引く可能性があるとブルームバーグ・ニュースは先に報じている。

 バークレイズのアジア太平洋担当M&A(企業の合併・買収)・金融スポンサー責任者、ラース・アーガード氏(香港在勤)は電話インタビューで、「中国勢が持つ最近危うくなった国外資産の一部は、18年以前の借入金での買収ブーム時に取得したものだ」と指摘した。

 危機前の投資撤退の計画も支障をきたしている。中国保険大手の安邦保険集団(現大家保険集団)は昨年に韓国の資産運用最大手ミレーアセット・グローバル・インベストメンツに58億ドル(約6120億円)の米ホテル資産を売却することで合意したが、ミレーアセットは今年に入りこの合意を破棄。ミレーアセットは理由の一つとして新型コロナによるホテルの閉鎖を挙げた。

 米との対立も一因

 こうした状況を受けて、中国企業は海外での企業の合併・買収(M&A)に慎重姿勢を強めている。ブルームバーグのデータによると、今年の中国の海外でのM&A取引総額は151億ドルと前年比25%減少。中国化工集団(ケムチャイナ)によるスイスの農薬大手シンジェンタの430億ドルでの大型買収があった16年のピークから大幅に落ち込んでいる。

 M&A減少の背景にはコロナの影響以外に、欧州などが中国の買収阻止を念頭に投資規制を強化していることや、米中間の対立がさらに激化していることがある。米国は人権侵害に関わった中国や香港当局者に制裁を科す法案を可決しており、海外で事業展開する中国企業にとって不確実性が増している。

 趙勝法律事務所のマネジングパートナーのエリック・リュー氏(上海在勤)は「米中間の不確実性は高まっており、中国企業は海外での投資に慎重にならざるを得ない。いまのところ中国企業が“海外進出”を止める兆候は見られないが、投資内容などの精査に時間を要することは明らかだ」と指摘している。

 ただ、中国企業は対外投資を完全に引き上げたわけではない。中国長江三峡集団は8月、スペインの再生可能エネルギー開発会社エクセリオが所有する13の太陽光発電所を購入することで合意した。今年の中国企業による数少ない欧州でのM&A案件の一つとなる可能性がある。

 バークレイズのアーガード氏によると、中国企業は引き続き海外での取引に関心を抱いているものの、事業補完を目的とした案件により焦点を当てているという。

 アーガード氏は「特に電力、インフラ、公益、ハイテク、消費者セクターにおける海外企業の一部買収または戦略的買収への意欲はまだ残っている。民間・国有を問わず、中国企業は買い手または事業主として、より洗練されたアプローチを取るようになっている」と指摘した。(ブルームバーグ Manuel Baigorri)

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