海外情勢

豪、映画の撮影誘致で復活期す 「T字」や「俳優同居」など独自のコロナ対策 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、オーストラリアで感染対策をとったうえで、映画が製作されている。

 シドニー近郊では、1984年公開のカルトホラー映画のリメーク版『チルドレン・オブ・ザ・コーン』(原作はスティーブン・キングの『トウモロコシ畑の子供たち』)が撮影中だ。地方の町で大人たちから逃れる若い狂信者らを演じる主役の子供たちは、撮影現場で大人たちがいなくなって血のりが乾いても、互いに安全距離を維持しなければならない。近づき過ぎると「(両腕を広げて)飛行機の形に!」と大声が響き、子供たちは腕を「T」の字に上げて隣の子と離れて広がる。

 感染拡大回避で商機

 29年ぶりのリセッション(景気後退)に直面する豪州にとって、パンデミック下で撮影中の同作品は、映画産業の成長、復活に向けた取り組みの最たる例だ。南東部ビクトリア州に新型コロナの第2波が押し寄せているとはいえ、豪州はおおむね世界のホットスポット(感染急増地域)とされるような大規模な感染拡大を回避してきた。世界的な感染拡大をビジネスチャンスと捉え、撮影誘致に力を入れている。

 映画調査会社オルスバーグSPIによると、豪州はニュージーランドや欧州の少数の国々とともに、パンデミックが発生している状況下で映画を製作できる数少ない場所の一つとなっている。映画産業と政府の橋渡し役を担う「オースフィルム」のケイト・マークス最高経営責任者(CEO)は、「われわれにどれほど大きなチャンスがあるかということだ。豪州に注目が集まっているのは、世界の他の地域からビジネスを行う上で安全な場所と見なされているからだ」と話す。

 豪州は5月にパンデミック下における映画製作について特別なガイドラインを発表した。撮影中に同居する俳優は映画の中で、パブでの友人同士のハグのようなスキンシップが容認される、感染リスクを最小限に抑えるために台本は書き直され、ソーシャルディスタンスが保てない場合はできる限りフェースマスクを使用する、といった具合だ。インドのボリウッド映画でも同様の措置がとられている。

 豪政府は7月中旬には2年間の税優遇措置と米ハリウッドの映画製作会社を念頭に置いた誘致策に加え、映画、テレビ業界に4億豪ドル(約307億円)の追加補助を行った。豪州は海外からの渡航者の入国制限を続けているが、映画の出演者や撮影クルーへの適用を除外している。

 2018会計年度(17年7月~18年6月)に映画、テレビ番組の制作が豪経済にもたらした利益は91億豪ドルと、過去5年で15%増えた。映画、テレビ業界と政府の調整役を担う「スクリーン・オーストラリア」によると、パンデミックに見舞われる前に今年は国内での映画製作最大の年になる予定だったという。今となってはその可能性は低そうだが、それでも同部門は豪経済の明るい材料となっている。オースフィルムは過去数カ月間で米国が支援する一連のプロジェクトから12億豪ドル相当の製作に関する問い合わせがあったと見積もる。

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