海外情勢

英が離脱協定の一部無効化になる法案提出 EU「国際法違反」法的措置も

 1月に欧州連合(EU)を離脱した英国とEUが、自由貿易協定(FTA)交渉を続ける中、英ジョンソン政権は9日、成立すれば発効済みの離脱協定の一部が骨抜きになる国内法案を下院に提出した。EU側は「国際法違反だ」と強く反発。法的措置も辞さない構えを見せており、混乱が予想される。

 合意の一部を無効化

 9日提出された英国内市場法案では、北アイルランドの企業が英国内市場への「自由なアクセス」を確保できるようにするために、英閣僚が昨年の離脱協定の一部を無効にでき、北アイルランドの残りの部分との通商に障害が生じる可能性がある。

 EUは英議会に提出された国内市場法案を分析し、英国に対し法的措置を取る根拠があるとみている。EUが暫定的な分析を基に作成し、加盟国に回覧された作業原案をブルームバーグが確認したところ、今回の英国の新法案は「実質的な規定の明らかな違反」になるという。

 英首相府は同法案について、「セーフティーネット(安全網)を創造し、離脱協定の本文の不明瞭な部分を取り除く」ことが狙いと説明している。

 EUは暫定分析の結果、同法案が議会を通過する前の段階でも離脱協定に基づき法的な改善措置を求めることができる可能性があり、法案が成立すれば、それが明確な正当性を持つと判断している。

 EUの作業原案は、離脱協定に基づく国際公約に矛盾しても、新法案が一部条項の発効を明確に認めていると強調。そうした義務違反は「離脱協定の下で利用可能な法的救済措置への道を開く」と結論づけている。

 また作業原案によれば、英国の移行期間が今年末に終了すれば、EUは離脱協定に基づく紛争解決メカニズムを始動させる可能性があり、最終的には金融制裁につながる可能性があるという。

 信頼傷つく懸念

 EUのフォンデアライエン欧州委員長は9日、新法案について「非常に懸念している。ジョンソン首相の取り組みは(EUとの)信頼を傷つけることになる」と牽制(けんせい)した。

 ミシェルEU大統領も同日、「将来的な関係を育む上で必要な信頼を築けない」と主張した。

 一方、大西洋を隔てた米国でも、英政権の行動に批判的意見が出ており、ペロシ下院議長は「ジョンソン氏の行動が北アイルランドの平和を脅かすことがあれば、英米貿易協定は絶対に成就しない」と警告した。

 英国内でも、多数の与党保守党議員や高官らの間で、国際法を破ることに対する議論が活発化している。

 保守党のメージャー元首相は「交わした約束は守るという評価を失うことになれば、対価以上の決して取り戻すことのできない何かを失うことになろう」と懸念を表明した。

 一方、英製造業者の団体は10日、英国製品の主要輸出先の上位を欧州各国が占めるという新たなデータを示し、輸出を守るためにEUとの離脱協定の順守を求める内容の声明を発表した。

 英国とEUは事態を協議するために同日に緊急会合を開くことを明らかにした。両者は8日から3日間の日程でFTA交渉の第8回協議を行っているが、交渉は国家補助金と英水域におけるEU漁船の操業権をめぐり、膠着(こうちゃく)している。(ブルームバーグ Alberto Nardelli、Charlotte Ryan)

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