海外情勢

コロナ禍で途上国支援の努力帳消し 危機感募らせる国際機関

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症。収入源を失った途上国の人々は出口の見えない困窮にあえぎ、飢餓や男女間格差の拡大などコロナの影は多方面に広がりつつある。国際機関は途上国支援について「積み上げてきた努力が帳消しになってしまう」(世界銀行の西尾昭彦・副総裁)と危機感を募らせ、国際社会による一層の後押しを訴える。

 フィリピンの首都マニラの観光名所イントラムロス地区。城塞に囲まれ、スペイン統治時代の面影を残す街並みが人気だが、すっかりにぎわいは消えていた。「散歩する地元の人くらいしか見ないよ」とため息をつくのは、20代のペディキャブ(サイドカー付き自転車)運転手、ジェイさん。コロナ禍以前は城塞内のマニラ大聖堂前で客待ちをする同業者が数十人いたが、今では3人程度。観光客の姿は目に付かない。

 ペディキャブで城塞内を周遊する350ペソ(約760円)のコースが人気で、1日5人も乗せれば生活が成り立ったが、利用者はほぼゼロに。魚の缶詰一つを妻や幼子と分け合うこともある困窮の日々に、コロナ前は「いろいろな国の人が来て楽しかった」と、かすかな笑みを浮かべた。

 途上国の貧困問題はここ数年、特に貧しい南アジアやアフリカの経済成長により、解消に向けた「追い風」が吹いていた。

 それがコロナで逆風に。西尾氏は「カンボジアでは外国人旅行者が80%減り、それだけで雇用が100万人分失われた」と指摘する。海外からの仕送りも全世界で2割減るとみられ、途上国の家計を容赦なくえぐる。

 コロナによる物流停滞や収入減でアフリカなどでは飢餓が深刻化。国連食糧農業機関(FAO)などによると、緊急支援がなければ食料不安を抱える人口は、コロナ以前の推定1億4900万人から2億7000万人に増える恐れがある。

 国連は2030年までに1日1.9ドル(約200円)未満で暮らす極度の貧困の割合が、女性は男性よりも25~34歳で2割以上多くなると分析、コロナによってジェンダー格差が広がると指摘する。支援拡充を訴える西尾氏は「途上国は大変苦しい現状にある。今が踏ん張りどころだ」と警鐘を鳴らす。(マニラ、ワシントン 共同)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus