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まるっとしすぎ「デジタル庁」に期待できない理由、でも期待したい理由 (1/2ページ)

 政治の話に口を突っ込むつもりは毛頭ないが、そうは言ってもテクノロジー、インターネットは世の中のインフラ。日本という国の運転手が変われば、テクノロジー方面でもさまざまな変化が生まれるのは言うまでもない。

 「デジタル庁を可能な限り早期に設置する」と自民党総裁選の頃から掲げていた菅義偉首相は、残り任期が短い中、解散総選挙に向けて動かしていくのだろうから、私たちの生活や仕事、もっと言えば“稼ぎ”にもかかわる社会変革、環境の変化が何かしら起きることだけは間違いないだろう。

 果たしてデジタル庁という切り口がどういうものなのか。その名前も含め、あまりにも“まるっと”しすぎているようには感じられるが、デジタル庁というコンセプトが実効性を持つのかどうか、注目すべき点はいくつかある。

 日本を“まるっとDX?”

 デジタル庁ってどうよ? という話題の前に、そもそもデジタル庁とは? という意識合わせをせねばならない。菅首相の話を総合的に考えるならば、要は日本の行政機関をデジタルトランスフォーメンションするため、省庁をまたいだ改革を行うための組織というところだろうか。

 デジタルトランスフォーメーションは「DX」とも略されて、いろんな企業が取り入れているから、多少、ITについて詳しくない読者層でもイメージできるだろう。

 例えば今年1月、米ラスベガスの「CES」にはデルタ航空のエド・バスティアンCEOが登場。航空業界を“DXしてきた”ここ数年の成果と今後のプランなどについて話し、コンベンションではどのような取り組みをしているのか大々的な展示を行った。

 ネットやアプリを活用し、業務用システム全体の構造だけでなく業務の手順や社内ルールなども含め、大胆にシステムを改良することで“当たり前を当たり前”にすることを目指したデルタ航空の取り組みは拍手喝采を受けた。

 属人的でプロセスが見えにくかったゲート変更、到着機材の遅れ、それに伴うさまざまな“行動すべきこと”を、業務システムとエンドユーザー向けアプリを接続し、適切に見せることで解決。今後は到着時間に合わせて移動手段を手配したり、宿泊手配の変更をかけたり、といったところまでDXの範囲を広げようとしていた。

 ご存じのように旅行業界は、それどころではない事態に陥っているが、情報システムと業務プロセスを高い視点で見直して、組織の構造から見直せばさまざまなプロセスが可視化され、流れも早くなり効率化する。

 既存業務を部分的にIT化をするのではなく、IT化することによる変化を組織の構造から運営まで幅広く最適化することがポイントとなる。

 特定企業でのDXはさまざまな事例があるから、ここであらためて紹介するまでもないが、業務改善と顧客体験の改善を同時に行えている例は枚挙にいとまがない。きちんと目標設定を行い、前に進めることができれば日本が変わることは間違いない。

 “まるっとDX”なんて日本じゃできない?

 世の中が良くなると感じることに対し、菅首相は思いを寄せて取り組むタイプのようだ。少なくとも携帯電話料金引き下げ議論のプロセスはそうだった。

 そんな菅首相が、安倍政権時代に新型コロナウイルス対策でのデジタル行政における目詰まりのような対応の遅さを、なんとかしたいと考えたのは納得できるところだ。官邸主導で行われていた新型コロナウイルス対策で、何らかの政策を実施しようとしても、最終的に行政サービスを受ける国民までの動線は美しく引くことができない。

 たかだか……というと語弊があるかもしれないが、各種給付金や雇用調整助成金などをオンライン申請するといった、ごく基本的なプロセスですら不具合が続出した。医療機関との連携など、それぞれに細かく掘り下げれば原因を切り分けることはできるだろうが、問題は行政機関のITシステムや担当がぶつ切りで、組織の縦割り構造がそのままITシステムの問題として放置(というよりも、見て見ぬふりだろうか)されていたことにある。

 国単位でさえそうなのだから、当然、地方行政と滑らかに連携し、末端の国民に対して流れるように美しく連携するサービスなど期待しようがない。

 日本のICT行政はよく「遅れている」と表現されることが多く、官僚たちの意識の低さも問題になる。台湾との比較なども散々、コロナ禍の中でされてきたが、では本当に“訳の分からない奴ら”といえるのかといえば、実は各省庁の担当者、特に若い世代は問題意識や現状の認識は決して間違ってはいない。

 彼らの意識はそれなりに高いのに、ではなぜうまくいかないのか。

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