高論卓説

自然を生かす島国、北欧アイスランド 日本の参考にも

 さまざまな国について学ぶが、たいていは大国であったり、日本と関係深い国であったりする。かねて一度訪れてみたい国があるのだが、このコロナ禍で実現できずにいる。アイスランドという北欧の個性的な小国だ。

 この小国ほど特異な国がないと思われるに加え、私たちも研究するに値する側面を持つ。エネルギー政策に特徴がある。火力や原子力に電力を頼らず、水力と地熱で賄う。氷河からの水を、ダムを建設して利用し、火山と共存する国らしく地熱を活用する。風土を国策の中心に据え、自然を徹底的に生かす。

 アイスランドの地熱発電のタービンの70%は日本製だという。しかも日本の金融界が融資しているのだが、地熱発電はアイスランドでは、手堅い産業と読むからであろう。日本と違ってマグマが地表より浅い所にあるという特徴は、電力と温水をもたらす。暖房をはじめ、生活で使用する温水は自然の恵みだ。

 日本も火山国であり、全国に74カ所の地熱発電所があるが小規模、産業を支える十分な電力を供給できずじまい。

 日本のエネルギー政策は、再生可能な自然の利活用にシフトせねばならない。治水、治山については、昨今の自然災害による被害の大きさが教えてくれるとおり、国土強靱(きょうじん)化と同時にエネルギー政策も合わせて考えるべきだ。

 2018年に閣議決定されたエネルギー計画では、再生エネルギーを24%、石炭火力を26%などとする電源構成比率の見直しをした。が、これらの数字に現在はほど遠く、達成は困難な状況。石炭火力は32%から減らすのだ。温室効果ガス排出量を30年度までに、13年度比で26%減少させる目標を立てているが、これも達成は難しい。再生エネルギーの主力電源化を考えるなら、太陽光と風力と地熱を優先してはどうか。

 地熱については、観光地たる温泉関係者が湯が枯渇してしまうと大反対。また、国立・国定公園内に適地が多くあり、規制によって開発できずにいる。新内閣は、この緩和を推進すべきである。

 先の3人の自民党総裁選の演説会、だれもエネルギー政策について語らず、ガッカリさせられた。原発の新増設や建て替えは困難、エネルギーの基本計画の見直しを急ぎ、再生エネ比率の目標値を高め、国際社会を納得させる必要がある。石炭の代替燃料として、東南アジアから産業バイオマス廃棄物の輸入も有力であろう。

 さて、アイスランドは商業捕鯨の国。私たちが食するシシャモは、アイスランドからの輸入だ。漁業資源の問題と捕鯨国のためEU(欧州連合)に加盟していない。メキシコ方面からの暖流と北極からの寒流がぶつかる海域は、世界的な漁場になっている。で、独自路線を歩む数少ない国となった。気温は低いが、オーロラの美しい観光国でもある。

 驚かされるのは、この国は軍隊を保持しないことだ。北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、国防協定を米国とともに締結しているが、米軍基地は閉鎖されたままだ。地政学的な面もあろうが、軍隊なき不思議な国なのである。

 私たちがアイスランドを知ったのは、1986年に首都レイキャビクでレーガン米大統領とソ連(当時)のゴルバチョフ書記長が、冷戦終結のための会談を行ったからであろう。たった35万5000人の小国なのにユートピアに映る。エネルギー、漁業、安全保障など独自路線を歩むアイスランド。私は参考になる一面があると思っている。コロナ禍が弱まれば、どうしても訪ねたい国である。

 松浪健四郎(まつなみ・けんしろう) 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。博士。大阪府出身。

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