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日本三大銘茶の「狭山茶」、農業遺産への道険しく… 2度の落選に落胆

 日本三大銘茶の一つに数えられる埼玉県西部の特産品「狭山茶」が苦境に直面している。農業遺産への認定を目指しているものの、2度の落選という結果が突きつけられ、関係者の落胆は大きい。味の良さから人気の高い狭山茶だが、認定実現にはどんなハードルが立ちはだかっているのか。

 農業遺産の認定制度には、国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」と農林水産省の「日本農業遺産」があり、いずれも次世代に受け継ぐべき伝統的な農業や農村文化の保護を目的としている。

 狭山茶の生産農家がある入間、所沢、狭山各市など埼玉県内11市町は、業界団体などとともに「狭山茶農業遺産推進協議会」を平成29年に設立し、認定に向け機運の醸成を図ってきた。

 協議会は今年6月、世界農業遺産と日本農業遺産の候補として「狭山茶の『自園・自製・自販』システム」を応募したが、今月18日、1次審査での落選が発表された。応募した8県13地域中、通過できなかったのは「狭山茶」だけだ。1次審査でつまずいたのは30年に続き2回目となる。

 協議会がアピールしてきたのは、応募の名称にもある通り、生産者自らが茶葉の生産から加工、販売までを一貫して手がける独自のシステムだ。

 しかし、今年の審査では、そのシステムが生物多様性の保全に果たす役割が明らかでないことや、申請地域が広大過ぎることを理由に落選が決まった。30年の申請の際は「栽培方法が一体的・統一的に行われているかの根拠がない」といった指摘を受けている。

 狭山茶は明治8年、輸出のために「狭山製茶会社」が設立されたのを機に名称が統一され、ブランドが確立した。「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」とうたわれる優れた品質で知られる。

 静岡県では、茶畑の周りの草地から草を刈り取って茶畑に敷く「茶草場農法」が世界農業遺産に認定されている。

 狭山茶が認定に至らない理由について、協議会関係者は「販売量や評判などは評価のポイントにならない。そこを見てもらえるとありがたいのだが…」と話す。協議会会長の田中龍夫入間市長は「結果は謙虚に受け止め、研究していきたい」との談話を発表した。

(中村智隆)

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