海外情勢

“どちらの側”に付くかで圧力も…米中がデータでも長期対立へ

 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)や北京字節跳動科技(バイトダンス)の「TikTok(ティックトック)」、騰訊控股(テンセント)の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」を狙った米国の規制は始まりにすぎない。次に来る何かが、今後数十年にわたり世界経済の形を変える可能性がある。

 中国の一部大手企業が米国民の個人データにアクセスできないようにする、トランプ米大統領が打ち出した規制は、月内に適用される。中国共産党の関与を許さない「クリーンネットワーク」を創出するための広範な取り組みの一環だ。第5世代(5G)移動通信ネットワークからクラウドサービスや海底ケーブルに至る全てを巻き込むこの戦略は、既に企業の取引や地政学に影響を及ぼしており、国も企業も米中どちらの側に付くか圧力を感じている。

 半導体関連など急落

 こうした長期リスクに市場は既に覚醒しつつある。今月上旬、中国が国内の半導体業界を抜本的に改革する計画をめぐる報道が行われた直後、米株式相場は半導体銘柄を中心に急落した。

 米国で議論されているのは、スマート冷蔵庫や運動モニターを含むあらゆるデータへの中国のアクセスを制限するかどうかだ。シリコンバレーや深センのビジネスリーダーは、こうした動きがグローバル経済全体のデカップリング(切り離し)につながる可能性を懸念している。

 全世界のオープンネットワーク化を提唱しているインターネットソサエティのプレジデント、アンドルー・サリバン氏は「これら全てが根本的にインターネットそのものへの攻撃だ。ネットワーク化されたアプリケーションに囲まれ成長してきた経済全体を破壊する試みだ」と指摘する。

 米ブルッキングス研究所のジェフリー・ガーツ政策グループ研究員は「今、インターネットが地政学的競争の新たな戦場になっている。こうした緊張が消散することはないと思う。長期にわたり共生し、何とか対応しなければならない」と述べる。中国のアリババグループを創業した馬雲(ジャック・マー)氏によれば、21世紀の経済を推進する上で、石油よりもデータが重要だ。

 米国主導の「クリーンネットワーク」は既に、10カ国余りの30社近い「クリーン」な企業をリストアップ。今のところ厳格に適用されているのは米外交機関・施設で、中国企業のような「信頼できないIT(情報通信)ベンダーからの伝送やコントロール、コンピューティング、ストレージ機器を末端に至るまで使用していない通信経路」が義務付けられている。

 新たな武器化に移行

 トランプ大統領は7日、「われわれの中国依存を終わらせる」と明言。だが中国の元外交官で、かつての最高指導者、トウ小平氏の通訳を務めた高志凱氏は「中国狙い撃ちを続け、きょうはファーウェイ、あすにテンセントをつぶしたとしても、中国の着実な経済発展という全体的なトレンドを変えることはできない」と話す。

 米中間の緊張を解消する上での一つの大きな問題が信頼だ。ポンペオ米国務長官は先月、「米国は中国共産党が言う全てに挑む必要がある」と主張。中国が制定した香港国家安全維持法(国安法)は民主派を標的とし、フェイスブックとグーグル、ツイッターは香港政府から要請された利用者データ処理を停止した。

 ヒンリッチ財団のアレックス・カプリ調査研究員は「サプライチェーン(供給網)の武器化から、データとプラットフォームの武器化に向かうシフト」に言及、「これについて中・長期的な考察はまださほど行われていないが、起き始めている」と分析している。(ブルームバーグ Bloomberg News)

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