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基準地価、テレワーク進めば郊外は上昇も

 今年の基準地価調査では、テレワークなどの働き方改革が、どう反映されたかが焦点の1つだった。しかし結果的には、都心と郊外の商業地や住宅地で下落傾向に明確な差は出ていない。ただ、専門家からはテレワークの業務効率が改善され、より普及が進めば、郊外の地価上昇につながるとの見方も出ており、今後も働き方改革の地価への影響が注目される。

 「これまでの所沢はベッドタウンだったが、リビングタウンに変わる」。西武ホールディングスの後藤高志社長は9月、西武線所沢駅の商業施設開業式典でこう述べた。東京都心から30キロ程度の距離にある埼玉県所沢市は、これまでは都心への通勤者が帰宅して休むための場所だった。しかし、新型コロナ禍で在宅勤務が普及しつつあることや再開発でオフィスビルの建築も進んでいることから、仕事も含めた生活全てが完結する街に変わろうとしている。

 新型コロナで東京都心から郊外へと人の流れが変化しているのは、都心のオフィス賃料や都内の月別人口に現れている。不動産仲介会社の三鬼商事が発表した東京都心の8月末のオフィス平均賃料(3.3平方メートル当たり)は6年8カ月ぶりに下落。空室率は6カ月連続で悪化した。在宅勤務の普及で都心の賃料の高いオフィスを見直す動きが出たことが背景にある。また、東京都の8月の人口が8年ぶりに減少に転じたのも同様の事情とみられる。

 しかし、こうした足元の変化は今回の基準地価には明確に現れなかった。三井住友トラスト基礎研究所投資調査第2部長の坂本雅昭氏は、その理由について、「テレワークの普及で都心に移り住む人の勢いは弱まってはいるが、テレワークの業務効率改善を疑問視する企業も多く、都心から郊外へと逆流するほどではない」とみる。ただ、今後のテレワークの業務効率改善など働き方改革の進展により、郊外への人の流れと地価の上昇が起きる可能性もあるとし、国土交通省の担当者も「来年1月の地価公示で郊外の地価に影響が出るか注視したい」と話す。

 一方で坂本氏は、都心のオフィスへの出社減少は、退勤時の買い物先となる都心の商業施設の需要にマイナスの影響を与えると指摘する。その上で郊外の再開発について「コロナを機に所沢のような開発は進むだろう。都心一辺倒だった住宅地の志向も、より広く環境の良い郊外へと多様化する」との見方を示した。(大坪玲央)

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