論風

重要性増すサイバー・宇宙防衛 装備開発の国策会社設立を (1/2ページ)

 世界の防衛分野は従来の陸・海・空の戦闘領域に加え、サイバー・宇宙が急速に重要になっている。サイバー攻撃により、三菱電機から防衛情報が盗まれたり、ホンダの自動車工場の生産が止まったりした。(知財評論家(元特許庁長官)・荒井寿光)

 外国では大停電が起き、鉄鋼プラントやガスパイプラインが破壊されるなど、“サイバー戦争”が現実のものとなっている。宇宙衛星は通信・放送、GPS(全地球測位システム)などの測位、気象予報など幅広く利用され、軍事的にも軍事施設の画像収集、弾道ミサイルの発射の感知、部隊の通信、艦艇・航空機の測位などに利用されている。

 日本の気象衛星や通信衛星が敵国から破壊されれば気象予測ができなくなり、通信インフラは機能を失い、社会は大混乱に陥る。既に中国やロシアはミサイルで衛星を破壊する実験を行っており、衛星攻撃衛星(キラー衛星)を開発中で、“宇宙戦争”がいつ起きてもおかしくない状態だ。

 国内の部隊は弱小

 自衛隊のサイバー部隊は約290人に過ぎないが、中国のサイバー部隊は実に17万5000人規模、北朝鮮は6800人規模、米国は6200人規模に上る。

 宇宙に関しては、米国は1万6000人規模の宇宙軍を持ち、中国では中央軍事委員会直轄の戦略支援部隊が、ロシアでは航空宇宙軍が宇宙戦を本格的に担当している。これに対し自衛隊は今年5月に「宇宙作戦隊」を作ったばかりだ(出典は防衛白書)。

 問題は人数が少ないだけでなく、装備が遅れていることだ。

 自衛隊はサイバーに関しては侵入防止システム、サイバー防護装置などを整備し、宇宙に関しては防衛通信衛星「きらめき1号」「きらめき2号」を運用しているが、増大する脅威に比べ日本の装備は質も量も不十分だ。

 サイバーや宇宙防衛の特色は、相手が攻撃してからでは手遅れになるので、相手の不審な動きを事前に察知し、抑止しなければならないことだ。サイバーでは相手の動きを察知し、攻撃を防ぐためのコンピューターシステム、通信ネットワーク、ソフトウエア、プログラム、データ、人工知能(AI)など最新装備が必要で、宇宙では偵察能力、破壊能力を持った装備が必要だ。従来の戦車、護衛艦、戦闘機などを開発・生産・補修していた防衛産業とは、全く異なる技術体系だ。

 官民の総力結集が必要

 日本では、サイバーや宇宙防衛用の装備開発はまだ初期段階だ。開発は民間に任せておいては進まない。外国と同じように国の責任で開発すべきだ。

 サイバーや宇宙防衛は安全保障の中核問題になりつつあるが、その装備は輸入に依存することなく、「国産原則」を採用すべきだ。これは日本の現在の技術水準からすると大変なことであるが、かつて日本の情報通信産業が世界トップであった経験を生かして、国産開発に挑戦すべきだ。

 そのために必要なことは第1に一貫性だ。開発・生産・補修を一貫して行うことが必要で、こま切れの発注では成果が生まれない。

 第2は日本の総力結集だ。防衛省の研究部門、民間・大学・研究機関の総力を結集し、デュアルユース技術を活用する。

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