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中国の民間系シンクタンク、その役割

 米ペンシルベニア大学が発表した「世界シンクタンク報告2019」によると、中国のシンクタンク数は507社で、米国の1871社、インドの509社に次いで世界3位となっている。米国には遠く及ばないものの、日本の128社と比べれば、ほぼ4倍の多さだが、数に見合った活動はしているのだろうか。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 中国のシンクタンクは大別すれば、党・政府系、大学系、民間系の3つに分かれる。

 最初に注目を浴びたのは、改革開放政策がスタートしたころだった。多くは党・政府系ではあったが、1977年設立の中国社会科学院を皮切りに、国務院発展研究中心、中国現代国際関係研究院などのシンクタンクが相次いで設立され、活発な政策提言を行っていた。

 習近平政権になってからは、「中国の特色ある新型シンクタンク」の設立が呼びかけられ、民間系シンクタンクも活躍の場を与えられるようになった。例えば巨大経済圏構想「一帯一路」では、中国人民大学の重陽金融研究院、北京大学の国家発展研究院といった大学系のシンクタンクのほか、新しく登場した全球化智庫、盤古智庫などの民間系シンクタンクもさまざまな提言を行っている。

 全球化智庫は2008年の創設で、研究スタッフは100人余り。民間系シンクタンクから初めて世界ランキングのベスト100に入った。もう一つの盤古智庫は13年の創設。国内外から約350人の研究スタッフを集めている。

 ただ最近は言論統制が厳しく、党・政府に批判的な提言は出しにくくなっている。党・政府に批判的な発言をしていた民間系シンクタンクの天則経済研究所が、活動を停止されてしまうという事態も発生している。このほか、民間系シンクタンクは財政的な基盤が弱いなどの問題点も抱えている。

 数カ月前にある民間系シンクタンクとビデオ会議システム「ZOOM(ズーム)」を使って討論会を行ったが、経済成長率の見通しについての先方の発表は、党・政府の公式発言よりも楽観的な内容だった。日本側が香港の民主化問題について言及すると、先方は録画を一時、止めてしまうという一幕もあった。

 民間系シンクタンクは、党・政府とは違った立場から政策や戦略を提言することに存在価値がある。人口高齢化や格差拡大などさまざまな課題を抱える中国にあって、いまこそ本来の役割を発揮すべき時であろう。

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