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強固なサプライチェーンが"脱中国"でも"国内回帰"でも実現できないワケ (1/3ページ)

 コロナ後の日本経済はどうなるのか。早稲田大学政治経済学術院の戸堂康之教授は「グローバル化によって海外から経済ショックが流入しやすくなっていることは確か。しかし、ショックを和らげ、日本経済を再起させるためにもグローバル化が“効く”」という--。

 ※本稿は戸堂康之『なぜ「よそ者」とつながることが最強なのか』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

 金融危機、震災、洪水、パンデミック

 グローバル化によって経済的な悪影響が世界に波及した一つの例は、リーマン・ショックに端を発する世界金融危機の世界的な拡大です。

 2008年に世界的な大手投資会社リーマン・ブラザーズ社が経営破綻したことで、リーマン社の債権を保有していたアメリカ国内外の金融機関が資金繰りに行き詰まると、その影響は瞬く間に世界各国の金融機関に波及しました。

 さらに、金融機関が資金不足に陥ったことで、世界の多くの国で景気が後退しました。なかには震源のアメリカよりも大きな割合で一人当たりGDPが縮小した国もありました。

 経済ショックは、金融ネットワークだけではなく、サプライチェーンを通じても波及します。そのことは、東日本大震災後に世界が実感することになりました。震災前の東北地方は、自動車や電機電子産業のサプライヤー企業が多く立地していました。

 これらの工場が震災で破壊されたため、被災地からの部材の供給がストップしてしまいました。その結果、震災の被害を直接受けなかった地域でも、部材不足から生産を停止したり減産したりせざるを得ない企業が多く出たのです。

 震災前の2011年2月から震災直後の3月にかけて、東北地方の工業生産は3割以上も急減しましたが、同時に全国の工業生産も15%程度減少したのです(図表1)。さらに、その影響は海外にもおよび、アメリカのゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、トヨタ自動車、ホンダ技研、韓国のルノーサムスン、タイの日系自動車会社などが減産に追い込まれました。

 中国が2カ月閉鎖されるとGDPは3.5%減少する

 兵庫県立大学の井上寛康と私が日本の国内のサプライチェーンのデータを使って分析した結果、東日本大震災によって生産設備が破壊されたことによる直接的な付加価値生産額の減少は約1000億円でGDPの0.02%でした。

 直接被害は地域的には東北地方および関東の一部に限られていましたが、被災地からの素材や部品の供給が止まり、被災地での需要が急減したことで、その影響はサプライチェーンを通じて全国に広がっていきました。

 図表2は、震災当日から60日目までに通常よりも生産を減らした企業を、点で示したものです。最も濃い点は8割以上生産を減らした企業を表しています。これを見ると、震災から20日後の段階で、全国の多くの企業が大幅な減産を強いられていたことがわかります。その影響は、震災後60日経った後でも全国で持続していたのです。

 震災後のサプライチェーンの途絶によって間接的にもたらされた生産減少の総額は11兆円、GDPの2.3%と直接的な影響の100倍に上りました。

 東日本大震災から約10年後、グローバル・サプライチェーン途絶の問題は、コロナで再びクローズアップされることとなりました。ある推計によると、中国が2カ月間経済封鎖されると、その影響は全世界に波及してGDPは3.5%減少するといいます。

 「スモールワールド・ネットワーク」は波及効果が大きい

 このような波及効果はサプライヤーからの部材の供給が途絶したときに他社への代替が容易であればあるほど、小さくなります。たとえば、供給が途絶した部材をどの企業からも調達できると仮定すれば、波及効果はほとんどゼロに近くなります。

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