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「都心から成田まで15分」トヨタが本気で進める"空飛ぶタクシー"の中身 (1/3ページ)

 新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた自動車業界は、大きな変革期を迎えている。直近四半期決算で黒字を計上したトヨタ自動車が次に目指すのは「空飛ぶタクシー」の開発だという。果たして実現するのか。長年トヨタを取材してきたノンフィクション作家の野地秩嘉氏が解説する--。

 ※本稿は、野地秩嘉「「人の役に立つ」がトヨタの使命-『トヨタ物語』続編連載にあたって 第2回」(note)の一部を再編集したものです。完全版はこちら。

 マスクやフェイスシールドの製造は「本業」だ

 トヨタの力は、つねに新しい事業に進出することだ。新しいことを始めるには、考えなくてはならない。考えることが成長につながる。成長するためには企業も個人も、あらためてアウトサイダーの立場から新しいことに取り組まなければならない。

 思えばトヨタは元々、織機を作っていた。それが自動車に進出した。自動車を作っていたのが空飛ぶモビリティを製造したり、ウーブン・シティのような新しい町を開発することは少しもおかしなことではない。トヨタは新型コロナウイルスが蔓延しているなか、マスクやフェイスシールドを製造した。医療機器を作るためにトヨタ生産方式も活用した。

 それは創業者、豊田喜一郎が「人の役に立つ」ことがトヨタの使命と考えていたからだ。喜一郎は関東大震災で傷ついている人たちが避難したり、病院に行きたくとも交通手段がないのを見て、自動車製造を志した。自動車マニアだったから会社を興したのではなく、人の役に立つから自動車を作ったのである。マスクやフェイスシールドを医療現場に届けるために製造したのは、トヨタの本業だ。

 空港と都心を結ぶ「空飛ぶモビリティ」

 空飛ぶモビリティは中距離移動のためのものだ。中距離移動のなかでもっとも往来が多くなるのは、空港と都市中心部との移動だとされている。日本で言えば成田空港から都心まで、韓国であれば仁川空港からソウル市内まで、ニューヨークであればジョン・F・ケネディ空港からマンハッタン、パリではシャルル・ド・ゴール空港からシャンゼリゼまでといった具合だ。

 こうした移動は慢性的な渋滞になっている。どこの都市でもタクシー移動で1時間以上はかかる。その時間を短縮しようと思えば道路を走るのではなく、もはや空を使うしかない。そこで、ヘリコプターによる移動手段もできてはいる。しかし、いかんせん料金が高価すぎて、使えるのは一部の富裕層だけだ。

 中距離移動の効率化としてトヨタが選んだのが「eVTOL」、電動の垂直離着陸機である。実際の開発はアメリカのベンチャー企業が行い、トヨタは製造についてのアドバイスと量産体制の構築を手伝う。

 2020年1月16日、トヨタは次のような広報発表をしている。

 「トヨタ自動車は電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発・実用化を進めるJoby Aviation社と協業することで合意した」

 「Joby Aviation社は2009年に設立され、米カリフォルニア州に本社を置く。同社はeVTOLの開発に取り組んでおり、将来は空飛ぶタクシーサービスの提供を目指している」

 滑走路なしで離着陸できる電動タクシー

 「トヨタは今回、Joby Aviation社と協業するにあたり、生産技術の見地で、設計、素材、電動化の技術開発に関わるとともに、トヨタ生産方式(TPS)のノーハウを共有する。最終的には、高い品質、信頼性、安全性、そして厳しいコスト基準を満たすeVTOLの量産化を実現する」

 垂直離着陸機とは滑走路がなくても離陸、着陸できる機体のことで、Joby Aviation社がリリースする機体はエンジン式ではなく電動のそれだ。

 外見は6つのローターを持ち、上昇する時はローターの回転で浮かび上がる。水平飛行の際はローターが背後へ気流を流して推進する。今のところ飛行士をのぞいて5人の搭乗が可能な機体となっている。

 トヨタがJoby Aviation社に提供するのは「自動車の開発・生産・アフターサービスで培った強み」。はっきりしているのは、トヨタ生産方式を生かして、生産性を向上させ、1ドルでも安く機体を作ることだ。

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