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490円の弁当を売るなら690円と450円の弁当も売ったほうがいい理由 (1/4ページ)

 商品をうまく売るにはコツがある。マーケティング戦略のコンサルタントである楠本和矢氏は「これからのマーケティングには行動経済学の知見が欠かせない。行動経済学を使えば、より高い商品を買ってもらうことも簡単にできる」という――。

 ※本稿は、楠本和矢『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

 予想できない消費者の「非合理な判断」

 ここから、生活者の「非合理的な判断」の典型的なケースをいくつかご紹介します。本書で活用する理論については、本章の参考編にてご説明しますが、まずはここで少しだけイメージを持って頂きましょう。

 前述のダン・アリエリー教授の名著『予想どおりに不合理』で紹介されている事例が非常にわかりやすいので、そこからいくつか引用し、ケース1~4としてご紹介します。

 ケース1:比較対象によって、判断が変わる

 ある家電商品のメーカーが、今まで世になかった、家電商品を発売しました。当時としては大変斬新な商品であり、期待も大きかったのですが、それとは裏腹に売れ行きは鈍いものでした。

 そこで同社は、ある賭けに出ました。それは、その商品よりも50%以上高価な高級版の製品を投入するということでした。元々売れていない商品のさらに高級版を出すという判断は、マーケティング戦略の常識では発想しえないものです。

 しかし、その賭けは見事に当たりました。新たに「高級版」を発売した後、なんと最初に発売した方の商品が飛ぶように売れ始めたとのこと。

 なぜこんなことが起こったのでしょうか?

 「より高い商品」があると高い商品でも買ってしまう

 生活者の心理なので、100%それだとは言い切れませんが、恐らく高級版を隣に並べたことで、元々の商品が「割安に見え出したから」なのではないでしょうか。

 これは「選考逆転」と言われている心理です。ある対象となる選択肢について、それが提示された状況や順番などによって、選考態度が変化してしまう心理を指します。

 これを使った手法は、おとり効果(Decoy effect)と呼ばれるもので、色々な場面で使われています。

 例えば、あるお弁当屋さんは、元々1種類だった幕の内弁当(490円)をもっと売るために、ラインナップを「450円、上490円、特上690円」の3種類に増やしました。そうすると、「上490円」が一番売れ、幕の内弁当全体の売上は前年比で大幅な増加を達成したそうです。

 3つのグレードの二段階目が最安値に寄っているので、何となく割安感を抱いたからかもしれません。レストランのメニューでも、そういう並べ方をしているものは多いです。

 生活者側に、絶対的な価値判断のスキルがない、もしくはあるようで実はない、という状況において、あたかも「合理的に見える判断の基準」ごと提供され、それに乗せられてしまった、ということなのでしょう。

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