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「緊急事態宣言でさえ刺さらない」リーダーの言葉が国民の感情を逆なでする理由 (3/4ページ)

 池田と福田は政治的には対立していたが、人間としての生きざまにはどこか似通ったところがある。いずれも人間的な信頼感があって、たとえば福田は政権後半に支持率が上がっていくという、つまりは政権を担当することで国民から信頼を得ていったことが数字にも表れている。政権が言行一致でないと、なかなかこうはいかない。

 あの人が言うならきいてやろう、というのは、人間としての信頼感がなければならない。政治家における信頼感とは、言行一致にほかならない。うそをついたり言い訳に終始する政治家は、やがて信頼を失うのである。

 言葉が心に響くための第二の必要:「正しい志」

 第二に、「正しい志の必要」である。

 ケネディ暗殺後に大統領になったリンドン・ジョンソンは、それまで民主党の中でも保守的な人間とみられていた。ところが大統領に就任するや、リンカーン以来と言われる公民権法、いわゆる人種差別撤廃法を成立させた。

 ジョンソンは「立法の魔術師」と言われるほど議員時代から議会操縦に長けていたが、公民権法を成立させるには、それまでジョンソンの味方だった保守派、つまり公民権法を推進したくない連中と真正面から戦わねばならなかった。

 ジョンソンはしかし、「公民権法案が通るまで、他の法案はとおらなくてもいい」とまで言い切って法案成立を推進した。

 実はジョンソンは若い頃から人種差別を嫌っており、小学校教師としてヒスパニックの子どもたちを教えていた頃から、人種間の融和を志していた。

 人類普遍の正しい志に、ジョンソンの政敵たちも次々に味方となり、ついに公民権法は成立した。

 政治には、高い倫理性が必要である。利害関係が露骨に表れる場だからこそなおさら、高い志が不可欠で、そういう志を持った人物の言葉は、国民の心に必ず届く。志なくして、政治家の説得力はあり得ないのである。

 言葉が心に響くための第三の必要:「仁の心」

 第三に、仁。利他心や慈愛と置き換えてもいい。

 相手を思いやる気持ちがない者の言葉は、ボールを持たずに投げたふりをするキャッチボールのようなもので、相手は手応えを感じないし、球を投げていないのだから、返球はあり得ない。

 また、相手を思いやることがないと、暴言ととられる言葉も出てしまう。

 コロナ感染が再拡大したとき、「あちこちで気の緩みが見られる」と発言した政権幹部がいた。通常、気が緩んでいるぞ、という言葉は目上が目下に使う。

 なぜ「上から目線」になるのか?

 なぜ「上から目線」になるのか。それは、国民を無意識のうちに下に見ているからであり、そこに愛情や慈愛を感じることはできない。

 ほとんどの場合悪気はないのだが、陳情を受けて予算を付けることを「施し」くらいに考えている人間は、こういう態度に陥りやすい。

 旧海軍には「海戦要務令」というものがあって、その中に「和諧ハ軍隊ノ血液ナリ」という言葉がある。“和諧”とは、愛情と信頼あふれる人間関係のことである(中村悌次・元海上幕僚長)。

 命のやりとりをする戦場では、軍紀を守ることと同時に、互いに信頼し、愛情あふれる関係になければ組織は機動的に動かない。

 昭和天皇からの信任も厚かった山梨勝之進・元海軍大将は、戦後自衛隊での講話の中で、「部下を心から愛してください」と述べている。

 野党も含めて政治指導者は、国民から「支持される」ことばかり考えず、国民を愛し、その結果として厳しいことを口にする勇気が必要である。

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