海外情勢

インド財閥リライアンスが大改築 ハイテクとECに軸足

 インドの大富豪ムケシュ・アンバニ氏は、自らが率いる大手財閥リライアンス・インダストリーズの事業構造を石油関連などの旧来型の産業からハイテクと電子商取引(EC)に軸足を置く巨大企業に転換しようとしている。

 同氏は昨年、米フェイスブック(FB)やグーグル、米金融界の重鎮との資金調達交渉に多くの時間を費やし、270億ドル(約2兆8000億円)の新たな資金を獲得した。

 今年は5G最優先

 関係者によると、リライアンスの変革に向けた優先事項としては、年内の国内展開を目指す第5世代移動通信規格(5G)向けの製品開発に加え、同社プラットフォームへのFBの通信アプリ「ワッツアップ」の決済サービスの組み入れ、国内の小規模店舗ネットワークのリライアンスECとの統合が含まれる。また、昨年計画した債務の縮小とハイテク分野へのシフトを狙った石油・石油化学部門の株式売却も継続する。

 昨年7月の株主総会では、アンバニ氏らが2021年にも予定する5Gネットワークに加え、ネットフリックスやディズニープラスホットスター、アマゾンプライムビデオ、その他数十のテレビチャンネルを収める動画配信プラットフォームの概略などを説明。アンバニ氏は「デジタル部門ジオ・プラットフォームズも数百万の地元零細・中小企業向けアプリなどのテクノロジーソリューションを展開する予定だ。またプラットフォームは最終的に国際展開する計画だ」と話した。

 関係者によると、リライアンスの今年の最優先事業は5G。株主総会で5G関連製品を公開する予定だ。さらに、動画配信やオンラインゲーム・ショッピングなどの利用によるモバイル通信のデータ使用量を増やす狙いで、グーグルと54ドルの「アンドロイド」搭載のスマートフォンを共同開発している。

 また、フェイスブックやワッツアップ、インスタグラム利用者のリライアンスECプラットフォームへの誘い込みを目指しFBとも協働を進めている。ECサービス開発にはワッツアップ決済サービスとの統合は不可欠としている。

 実行力実証なるか

 ただ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、時価総額1790億ドルのリライアンスの事業を大胆に再編し、米アマゾン・コムやウォルマートなどがひしめく業界への参入を果たせるか、アンバニ氏の一挙手一投足に投資家の注目が集まる。同社株価は昨年9月に55%上昇し過去最高値をつけたものの、同氏の実行力は十分に実証されていないとして、その後上昇分が打ち消された。

 『ビリオネア・インド:大富豪が支配する社会の光と影』の著者、ジェイムズ・クラブツリー氏は「石油精製・石油化学事業はリライアンスの収益の大きな割合を占める。アンバニ氏が狙うのは、これらの事業以上に絶えず進化している業種だ。それらへの投資から利益を上げることが同氏にとって最大の難関となる」と指摘する。

 アンバニ氏はリライアンスの狙いが、インドで拡大するデジタル格差の是正策を国内企業に求めるモディ政権の目標と一致していると繰り返してきた。昨年は長年にらみ合いが続く国境付近で中国との軍事衝突にまで発展し、インド政府は中国に対抗できるハイテク技術を求めている。こうした中、アンバニ氏は政府に対しても存在価値を高めつつある。(ブルームバーグ Anto Antony、P R Sanjai)

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