日本の未来を考える

学習院大教授・伊藤元重 株価の高値が不気味だ (1/2ページ)

 コロナ危機による世界のGDP(国内総生産)の落ち込みは、1930年代の世界大恐慌以来である。世界大恐慌は10年以上も続いた。その背景にはFとGの問題があった。Fとは金融、Gとはグローバル化のことである。大恐慌が長期化したのは金融の混乱や保護主義の広がりが経済に悪循環を引き起こしたからだ。コロナ危機による経済的停滞が長期化しないためには、FやGでの混乱が起きないことが重要となる。その意味で金融危機が起きていないのはありがたい。株式市場は好調で、債券市場でリスクスプレッドの広がりも見られない。経済にある種の安心感を与えている。

 しかし、株価は実体経済と大きく乖離(かいり)して、高値を更新している。高い株価と停滞する実体経済の大きな乖離は、コロナ危機以前から懸念されていた。実体経済に比べて高すぎる株価に懸念を示す専門家も多く、何かのきっかけで株価が暴落するリスクが指摘されていた。コロナ危機が起きたとき、これで株価の暴落が始まり、リスク度の高い債務者に対する金利が上昇すると多くの人が恐れたはずだ。実際、そうした動きがあった。しかし、中央銀行が大胆かつ迅速に動いた結果、金融市場の混乱を抑え込むことができた。これは本当に大きな成果であった。金融危機さえ起こさなければ、景気後退が長引くことはない。後はウイルスの感染をいつ抑え込むことができるかが、景気回復のタイミングを決める。ただ、感染の広がりがなかなか収まらないことが問題だが。

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