海外情勢

台湾TSMC、半導体供給の期待一身 世界のハイテク・自動車が依存

 世界の自動車業界で半導体の調達難が深刻化する中、半導体ファウンドリー(受託製造会社)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)からの半導体供給確保に日米欧や中国がしのぎを削っている。世界経済における台湾の役割は目立たなかったが、車載半導体の供給不足を機に一気に脚光を浴びている。

 しのぎ削る日米欧中

 中国が省と見なす台湾は最先端のコンピューターチップを製造する能力を認められている。その功績の大半を担うのがTSMCだ。同社は米アップルのスマートフォン、人工知能(AI)、高性能計算向けの半導体を生産している。

 トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米フォード・モーターなど大手各社が生産停止や工場の操業停止を余儀なくされる中、台湾の重要性は無視できないほど高まっている。

 日米欧の自動車各社は各国・地域の政府に支援を要請するほか、台湾当局やTSMCなど半導体メーカーにも協力を仰いだ。これを受け、台湾の半導体各社は自動車生産に影響が出ている半導体不足への対応に全力を挙げると当局者に伝えた。自動車産業による協力要請は米中がハイテク覇権を競う中で台湾が半導体製造技術で世界への政治的・経済的な影響力を増している現状を浮き彫りにした。

 米国のトランプ前政権は中国が米国製技術へのアクセス制限を行うために台湾を利用してきた。設計を含む全ての米国の半導体技術へのアクセスを禁止することで、TSMCなど半導体ファウンドリー各社から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出を阻止し、同社の台頭を抑えてきた。

 米政府はTSMCと協議し、米アリゾナ州に120億ドル(約1兆2900億円)規模の半導体工場を設立。一方、米半導体大手インテルもチップ製造のTSMCへの外注を検討している。

 欧州連合(EU)は台湾からの投資誘致を推進しており、いくつかの成功を収めている。シリコンウエハーを手掛ける台湾・環球晶円(グローバルウェーハズ)はドイツの同業シルトロニックの買収条件を引き上げた。買収が成立すれば売上高で世界最大のシリコンウエハーメーカーが誕生する見込みだ。

 もちろん、台湾が半導体サプライチェーン(供給網)の唯一のプレーヤーというわけではない。米国は半導体設計と電子ソフトウエアツールなどの分野で支配的な地位を維持している。

 しかし、より小さく、より強力で、より消費電力が少ない半導体が重要視されるにつれ、TSMCは存在感を高めている。

 日本政府も工場誘致

 日本政府もTSMC工場の誘致を計画している。日本の2021年度予算の研究開発投資の一部はTSMCの施設に使われる可能性がある。

 米国が今後も中国の技術発展を阻害すれば、中国政府が台湾などの半導体の知的財産を盗む動きに出る可能性があるとの懸念も広がっている。

 台湾のサイバーセキュリティー企業チームT5は、米国の対中輸出規制強化に対応して、台湾の半導体産業への攻撃が徐々に増加していることを確認している。

 一方、在中EU商工会議所のイエルク・ブトケ会長はブルームバーグ・テレビのインタビューで地政学的に半導体不足がより頻繁に発生するようになる可能性があると指摘。「輸出規制や政府による介入で突然サプライチェーンの混乱が発生する事態に備えるべきだ」と話した。(ブルームバーグ Alan Crawford、Jarrell Dillard)

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