高論卓説

バイデン米政権、人権問題に厳しい目 サウジ女性活動家らの釈放

 サウジアラビア政府は10日、女性の権利向上を訴えて2018年5月に拘束され、昨年12月28日にテロ関連罪で懲役5年8月、執行猶予2年10月の判決を受けた女性活動家ルジャイン・アル・ハスルールさん(31)を釈放した。

 ハスルールさんは、サウジでは当時認められていなかった女性の自動車運転の解禁などを求めて活動していた。しかし、女性の自動車運転が解禁される前月に、国家の安全を脅かそうとしたなどの容疑で他の活動家10人余りとともに拘束されてしまった。裁判では、海外在住サウジ人反体制派とのやり取り、サウジ政治制度の変革を求める動き、外交官やジャーナリストとの話し合いなどが問われていた。

 なお、釈放されたとはいえハスルールさんには、今後5年間の出国の禁止および3年間の保護観察という厳しい条件が付けられている。

 今回サウジ政府がハスルールさんを突然釈放したのは、同国の人権問題に厳しい目を向けているバイデン米政権に配慮したためと思われる。ちなみに、バイデン大統領は今回のサウジの動きを受け国防総省での演説で、「サウジ政府が著名な人権活動家を釈放したとの歓迎すべきニュースがある。女性人権家の釈放は正しい選択だ」と述べていた。

 その3日前の7日には、政府の後ろにいるサウジ人権委員会が、死刑判決を受けていた3人の青年を禁錮10年に減刑したことを明らかにした。3人の青年はいずれも少数派であるシーア派のアリ・アル・ニムル被告、ダウード・アル・マルフーン被告、アブドゥラ・アル・ザヘル被告で、それぞれ別に逮捕されていた。

 アリ・アル・ニムル被告は処刑された著名な聖職者シェイク・ニムル・アル・ニムル師のおいで、12年に17歳の若さで逮捕された。またシーア派抗議運動者の取り締まりのときに逮捕されたダウード・アル・マルフーン被告、アブドゥラ・アル・ザヘル被告も、逮捕時にはそれぞれ17歳、15歳の若さであった。

 なお、サウジ人権委員会は、禁錮10年から逮捕以降の拘束期間が差し引かれることから、3人が22年には釈放されるとしている。

 このほか4日には、次の裁判が3月8日に特別刑事裁判所で行われる予定の被告2人が暫定釈放されている。2人はサウジ・米国の二重国籍を持つサラーハ・アル・ハイデル被告とバデル・アル・イブラヒム被告で、19年4月にテロ関連罪で拘束されていた。ちなみに、サラーハ・アル・ハイデル被告は指導的な女性人権活動家の子息で、バデル・アル・イブラヒム被告は作家兼医師として活動していた。

 これら3人の青年の減刑、および米国との二重国籍を持つ2人の容疑者の暫定釈放の背景も明らかではない。しかし、誕生したばかりのバイデン政権が今後サウジの人権問題を重要視していく可能性をほのめかしていることもあって、サウジ国内ではその動きを意識したものと受け止められている。

 畑中美樹(はたなか・よしき) 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。

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