高論卓説

中国の果実で得た日本の「K字」回復 米欧投資家が注目、当面は株高基調

  業種によって明暗が分かれる現在の日本経済の姿は「K字回復」と呼ぶことができる。L字に転落しなかったのは、先行して景気拡大が続く中国経済からの恩恵を製造業が享受したからだ。その日本経済のメリットを認識した米欧系の投資家が足元で日本株を買い上げ、日経平均は3万円台を回復した。日米欧の超金融緩和政策はしばらく継続するとみられ、K字回復の下での株高基調も当面は維持されそうだ。

 世界経済を見渡すと、新型コロナウイルス禍でいったん落ち込んだ景気は、製造業が先行して回復。日本でも自動車や半導体、機械など輸出系の製造業を中心に足元の業績は急速に上向いている。3月期決算企業の2020年10~12月期決算でも、その傾向がはっきり出た。中身をチェックすると、好調な製造業を支えているのは、世界の中でいち早くコロナ感染の混乱から立ち直った中国向けに輸出する製造業といえる。

 1月貿易統計によると、対中輸出は前年同月比37.5%増の1兆2326億円と大きく伸び、金額ベースで対米輸出を約2000億円上回った。中国は20年10~12月期の国内総生産(GDP)が実質で前年同期比6.5%増。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、21年も前年比8.2%増と大きく伸びる。1月の自動車販売も前年同月比30%増の250万台と好調を維持した。

 日本の輸出企業は、この好調な中国経済の成長の「果実」を得て、好業績に結び付けている。この現象に先に気付いたのは、国内の投資家ではなく、ヘッジファンドなどに代表される米欧の投資家のようだ。財務省の対内対外証券投資によると、1月31日から2月13日の2週間だけで海外勢が日本株を7933億円買い越している。1月10日から30日までの3週間は1997億円の買い越しにとどまっており、日経平均が3万円台に到達する直近の上昇では、海外勢の買いが大きな駆動力になっていたことがうかがえる。

 この海外勢の動向の背後には、日米欧の中央銀行による超金融緩和の長期化観測がある。流動性の大きなうねりの一部が日本株に流入し、別の流れがビットコインなどの暗号資産に向かったと思われる。先行する中国経済とその恩恵を受ける日本の輸出産業、長期化する金融緩和という構図は少なくとも3カ月から6カ月は続くのではないか。とすれば、K字回復の下での日本株上昇の基調もしばらく継続すると予想する。

 しかし、どんな好状況にもリスクは存在する。私の目には、バイデン米政権による厳しめの対中政策の表明と反発する中国政府の対応による摩擦激化の展開が気がかりだ。イエレン米財務長官は、対中関税を当面維持すると表明。対話の模索も選択肢だったはずの中国は失望した可能性がある。この先、ウイグルでの人権問題を米国が追及することになれば、米中対立が一気に表面化することも予想される。さらに台湾をめぐる軍事的な緊張に発展すれば、今、世界が享受している株高基調は、劇的に転換する危険性がある。しばらくは、バイデン政権の対中政策から目が離せない状況が続きそうだ。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。

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