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中国・若者に人気「唐宮夜宴」とは

 旧正月・春節前夜(つまり大みそか)の夜に放送される年越し大型娯楽番組「春晩(春節聯歓晩会)」は、まさに「お化け番組」である。特に中国中央テレビの春晩は視聴率95%を記録したこともあり、ざっと11億人が見るのだそうだ。番組からは流行語が生まれ、春節明けには、みんなが話題にするので、見なければ話についていけないほどである。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 さて今年の「春晩」も、やはり新たな流行を生んでいるが、一番人気は地方から生まれた。河南衛星テレビが制作した春晩で、なかでも「唐宮夜宴」という舞踊が、ネットを中心に大人気となった。放送直後、「微博(ウェイボー)」で話題になると、あっという間にアクセス数7000万を突破したという。

 中国人視聴者に「今年の春晩では最もよかった」と言わしめたこの演目、いったいどういう内容だったのだろう。

 唐の宮廷に仕える若い「姑娘(グーニャン)」たちによるほんの5分程度の舞踊である。言ってみれば箸休めのような位置付けで、普段ならあまり話題に上ることはないような演目だ。

 だが今回は違う。

 古代の壁画から抜け出たような宮廷女性たちが楽しげに踊っている。その生き生きとした姿は、千数百年という時のベールを取り払ったかのようだ。

 史実に忠実性を保つために、「太めが美人」とされた唐の女性を再現し、頬に真綿を含ませてふっくらさせ、衣装には同じく海綿を使い、豊満な肉体を演出する。また唐の時代に流行した「斜紅」という頬に紅を斜めに描く化粧法も取り入れた。

 宮廷女性といえば、美しくしたたかで、どちらかといえばつんとすました近寄りがたいイメージだが、再現された彼女たちは違う。笑い合い、ひそひそ話をしたり、身体を押し合って戯れたりで、現代の女子中学生・高校生と寸分もたがわない。

 -彼女たちは現代の朝の通勤ラッシュ時の私たちと同じ!

 -博物館の展示物と同じ扮装(ふんそう)なのに、千数百年も前を模しているなんて感じさせない。彼女たちにも普通の生活があり、私たち同様、青春の楽しい時刻(とき)が流れていたのだと改めて感じた。

 -本当にかわいい。その一言に尽きる。

 -これまで古代文化に興味はなかったけれど、一気に変わった。中国伝統文化は素晴らしい!

 春晩の若者離れが言われて久しい。しかし一見「古臭い」と思われているものでも、若者の視点や現代風アレンジを加えることで、一気に生まれ変わる。日中文化交流を考える上でも、大いに参考になり、また励みになる好例であった。

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