海外情勢

中国ネット通販が農業を改革、政府とスマート化 生鮮拡販に布石

 アリババグループをはじめとする中国のインターネット通販大手各社が、生鮮食品のネット通販市場拡大に向け、政府とタッグを組んで伝統的な農業の改革に乗り出した。最新技術を活用した近代化への取り組みが期待を集めている。

 家禽管理や灌漑観察

 アリババグループは、同国南東部の福建省の養鶏業者に、家禽(かきん)の一日の歩数を計測するスマート・ブレスレットの提供を始めた。京東集団(JDドット・コム)は乾燥した北部の稲作農家の圃場(ほじょう)に、リアルタイムで灌漑(かんがい)の状況を観察できるスマートセンサーを設置。●多多(ピンドゥオドゥオ)は雲南省で科学者との協力で、人工知能(AI)を使用してイチゴの植え付けの自動化を行っている。

 習近平政権は食料の自給率向上を最優先課題の一つとしてきたが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で生産と運送網に混乱を来したことと、ネットを介した農産物の購入が増えていることが重なり、農業近代化の重要性は一段と高まった。

 こうした中、農家の生産量拡大に向けた支援、食品の品質向上、価格引き下げといった政府の取り組みにネット通販大手が参加するようになった。各社には、政府が推し進めるフィンテックやネット通販などの分野での市場独占に対する厳しい措置を回避しつつ、2023年までに1200億ドル(約13兆円)規模を超えるとみられている生鮮品ネット通販市場の足場を固めたいとの狙いがある。

 市場調査会社、億欧のアナリスト、リュー・ユエ氏は「農業は政府が支援する重要分野。若者がより良い働き口を求めて都市に流出し、殺虫剤や時代遅れの農法で食の安全が脅かされる中、ネット通販大手が政府に対し熱心に支援の手を差し伸べている」と指摘する。

 「スマート農業」は各社の利益と国の施策が合致する分野の一つ。中国国務院(内閣)は2月21日、最新技術で近代的な農業技術を開発し農村に活力を与えるため、民間投資の増額を求める指針を出した。繁殖や栽培は、AI、量子コンピューティング、半導体と並び今後5年間の技術関連の最優先事項だ。

 こうした政府の取り組みにもかかわらず、伝統的な労働集約型農業を行う家族経営や小規模経営の事業者が、農業を営む2億の事業者の約98%を占め、拡大する青果物の需要にかろうじて応じているのが実情だ。土地所有権に関する国の規制に加え、国土には多様な地形が広がり、欧米で一般的な大規模農業を展開することは難しい。

 低コストで共存共栄

 一方で国家統計局のデータによると、農業労働者の約3分の1が55歳以上で出生率も記録的に低く、労働力のコストを押し上げている。

 こうした状況に、中国の投資銀行、華興資本の消費者調査責任者、チャーリー・チェン氏(香港在勤)は「効率化と大規模生産でコストは下がる。また品質が向上すれば作物の価格も上向く。この状況を実現できれば農家もネット通販企業も恩恵を得られる」と指摘する。

 アリババのスマート・ブレスレットを養鶏場のニワトリ約1000羽に取り付けた福建省のレイ・ジンロンさんは「一日2万歩以下は病気の兆候。病気にかかった鶏を探して農場を歩き回る必要がなくなった」と話す。ブレスレット導入で新たな働き手を雇わずとも生産規模を拡大することが可能になり、ジンロンさんの村では平均月収が10年前の約4倍に増加した。

 ただ、こうした取り組みは緒に就いたばかりで普及には時間がかかる。AIやその他最新技術の基盤となるデータもこれからだ。(ブルームバーグ Coco Liu)

●=餅をてへんに

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