海外情勢

銅高騰が脱炭素の重しに インフラ構築で需要増、供給不足長期化も

 各国が化石燃料に依存しないエネルギーへの転換にかじを切る中、銅相場が急騰している。エネルギー転換にはスマートグリッド(次世代送電網)や風力タービンなどの環境インフラが不可欠だが、その製造に必要な銅の需要が一気に高まったためだ。足元の市況高が続けば気候変動対策の負担増につながり、世界的な脱炭素化の行方を左右しかねない。

 地下送電線に多用

 銅価格は3月初めに1年前の安値水準から約2倍になり、約9年ぶりの高値に急騰した。コモディティ(商品)相場が新たな「スーパーサイクル」に突入するとの観測も広がり、銅価格は天井に届いていないというのが大方のアナリストの見方だ。

 シティグループ証券によると、再生可能エネルギー発電や蓄電池、電気自動車(EV)、スマートグリッドなどへの需要が銅の使用量全体の約20%を占める。各国政府は今後数十年以内に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする野心的な目標を打ち出しており、再エネ由来の発電の需要は増大している。エネルギー転換に伴い、銅需要はさらに押し上げられる公算が大きい。

 その理由の一つには再エネ発電所の増設に伴う送電線の整備が必要になる事情がある。銅はアルミニウムの約2倍の導電性を持つ。また、発電設備に必要なエネルギー消費量を低減できる性質もあり、地下の送電線の材料に多く用いられる。

 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の予測によると、世界の送電網は2050年までに4800万キロメートルに拡張する。この長さは地球の外周の約1200倍に当たり、銅の需要は現在の2倍の360万トンに押し上げられる見通しだ。

 英国の送電・ガス供給事業者のナショナルグリッドによると、英仏間に240キロメートルに及ぶ海底送電線を敷設する「IFA2」と呼ばれる国際連系線プロジェクトでは9000トンの銅が使用された。現在計画されている英国とデンマークを760キロメートルの海底送電線で結ぶプロジェクトでは2万6000トンの銅が必要となる見込みだ。

 BNEFによると、現在の洋上風力発電プロジェクトのコスト全体に占める銅の割合は比較的小さいものの、今後数年間で増加し、足元の1%から50年までに約3%に達するとみられている。デンマークの風力タービン大手ベスタスの試算によると、4.2メガワットのタービンを利用する総出力100メガワットの風力発電所の場合、タービンに使用する銅の量は約89トンとなる。

 さらなるコスト増も

 銅価格急騰は脱炭素化社会への移行に伴う需要増を見込んだ投資家たちが牽引(けんいん)役となった。だが、こうした初期の楽観的な見方は各国がインフラ投資計画を実行に移す際、コスト増となって跳ね返る可能性がある。

 シティグループ証券のコモディティ調査部門担当マネージング・ディレクター、マックス・レイトン氏によると、脱炭素化に向けて銅の需要は年率で最大3%程度伸びる見通しだ。この場合、長期にわたり銅の供給が不足し、さらなる価格高騰に発展する恐れがある。

 もっとも、価格高騰は資源各社による鉱山開発投資の呼び水となり、供給量の増加につながる可能性もある。ただ、プロジェクトの立ち上げから開発に至るまでのリードタイムの長さが問題となる。

 米国の大手資源会社サザン・コッパーのラウル・ジェイコブ最高財務責任者(CFO)は「この価格水準で推移すれば、新規プロジェクトの発表が出るだろう」と指摘。だが、プロジェクトの決定から生産に至るまでにタイムラグがあり、「価格サイクルは以前より長期化する見通しだ」と話した。(ブルームバーグ Rachel Morison、William Mathis)

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