海外情勢

変異株が渡航再開の障壁に 空港で水際対策強化、旅行ニーズ回復不透明 (1/2ページ)

 感染力の強い新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るうなか、各国の空港は水際対策を強化している。世界の大部分の地域で検疫措置が厳格化・長期化しており、旅行者にストレスを与えるだけでなく、航空各社が目指す海外渡航再開への大きな壁として立ちはだかっている。

 各国規制ばらつく

 イスラエルや英国などがワクチン接種を足掛かりに経済再開への道を模索する一方、各国の当局は既存ワクチンに対応しない変異株の感染拡大を防ぐため規制強化を急いでいる。変異株に対するワクチンの有効性に疑問が残るなか、公衆衛生をめぐる戦いの新たな戦線は海外旅行需要の早期回復への希望に影を落としている。

 ジョンソン英首相は2月、航空機による外国旅行が早ければ5月17日に再開する可能性を示唆し、同国の航空会社の予約は急増した。一方、英国は危険度の高い「レッドリスト」に指定する33カ国から到着した渡航者に対し自己負担で10日間のホテル隔離を義務付けるなど、検疫措置を強化したばかりだ。

 世界で最も感染防止に成功している地域は検疫措置を強化しており、政策立案者は旅行の再開時期について慎重な姿勢を崩さない。豪メルボルン当局は市外に特注の隔離施設を建設する計画を立てている。香港は中国本土以外からの入境者に対し、指定ホテルで21日間の隔離を義務付けるなど、世界屈指の厳格な措置を導入している。

 航空各社は海外旅行解禁に向け世界共通の規格の策定を進めているが、各国の入国規制のばらつきが取り組みを阻害している。国際航空運送協会(IATA)は検疫に代わる検査やワクチン証明書を提案しているが、各国政府では支持を得られていない。

 シンガポール工科大学で航空輸送管理の講師を務めるヴォロディミル・ビロトカク氏は「隔離措置が実施されている限り、旅行再開について真剣に語ることは不可能だ。各国は規制を作り続けるとともに、その都度変更もしている」と指摘する。

 ホテルに隔離された旅行者は窓が開かない狭い部屋に閉じ込められることが多く、ストレスを抱えかねない。金融関係の企業で働くキム・チャニョンさん(42)は韓国出張時にソウルで14日間の隔離措置に耐え、帰国後も香港のシェラトンホテルで3週間、ホテルに缶詰にされた。運動はもとより、新鮮な空気を吸うことや人との交流も禁じられ、辛く苦しい思いをしたキムさんは、精神科医の治療を受けており、上司には「この生活様式をいつまで続けられるか分からない」と訴える。

 各国政府は南アフリカ共和国などを由来とする感染力の高い変異株の侵入を阻止するため、隔離措置が必要だとの見方を示している。南アフリカの変異株は隣国のザンビアの感染者数が1カ月で16倍に急増した原因とみられ、ブラジルや英国由来の変異株も確認されている。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で教鞭(きょうべん)をとる疫学者のアブラー・チュタイ氏は「問題は現時点ではこれらの変異株についての情報がほとんどないことだ。隔離措置の強化は予防手段としては賢明かもしれない」との見方を示す。

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