海外情勢

米で母親の社会進出に逆行リスク、子供の学校閉鎖で職場去る

 米国の女性が労働力から脱落している。社会学の学術誌ジェンダー・アンド・ソサエティーに発表された論文で明らかになったもので、この傾向は学校閉鎖率の高い州で顕著だった。数十年がかりで進めてきた女性の社会進出が逆行するリスクが生じている。

 父親よりも重い負担

 新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となる前、母親の労働参加率は父親より約18ポイント低かった。在宅でのオンライン授業を多用する州では、2019年から20年にかけてこの差はさらに5ポイント広がった。一方、対面授業を続けている州では母親の労働参加率の低下ペースは鈍かった。

 この研究で見えてくるのは、学校再開をめぐる議論の複雑さと、それが長期的に与えかねない影響だ。この問題は保護者や教師、政治家を二分してきた。新型コロナの感染抑制が広がるにつれ、対面授業を再開する学校は増えているものの、依然として半数以上の生徒は全面的、もしくは部分的にリモート学習を余儀なくされている。そして、この問題は父親よりも母親に大きく影響している。働く女性が子供と家にいるために職場を離れる時期が長引けば、彼女たちのキャリアに及ぶリスクもその分大きくなり、ひいては経済全体の回復にも波及する。

 論文をまとめたワシントン大学セントルイス校のケイトリン・コリンズ助教授(社会学)は、「子育てという点でパンデミックを考えたとき、学校や保育所の閉鎖によって増えた負担が主に女性の肩にのしかかるだろうという不安があった。残念ながら、その通りのことが研究で明らかになった」と述べた。

 同助教は共同執筆者とともに、全米数千の小学校の開校状況をデータ化し、人口動態調査(CPS)の労働力調査とひも付けている。小学校の学齢児童が1人以上いる母親と父親の労働参加率を算出し、26州の人種、年齢、婚姻状況、教育について調整した上で、メリーランド、ニューヨーク、テキサスの3州に絞り込んで2019年9~11月と20年同期で比較した。

 同居の1000万人失業

 対象となったメリーランド州はほとんどがリモート授業で、ニューヨーク州はリモートと対面授業が混在。テキサス州は半数以上の地区の小学校が終日対面授業を提供していた。

 この中で最も男女差が大きかったのはメリーランド州だった。同州では20年に父親の労働参加率が5ポイント減少したのに対し、母親は16ポイント低下した。

 一方、リモートと対面授業が混在しているハイブリッド設定の州では傾向があまり明確に表れず、学校閉鎖の全面的な影響を理解するにはさらなる調査が必要となる。例えば、ニューヨーク州の母親の労働参加率の低下幅はテキサス州より小さく、それぞれ7ポイント、10ポイントだった。

 ただ全国的には、メリーランド州と同様におおむねリモート授業だった州で男女格差が最も大きく、統計的な意味がある。例えば、バージニア州では父親の労働参加率が2ポイント低下したのに対し、母親は11ポイント低下した。

 米国勢調査局によると、平時には子供と同居する母親の約70%が就労している。パンデミック発生時に約45%が積極的に働かない状態になり、その後、割合は35%に低下した。これを裏付けるように、今年1月時点で学齢期の子供と同居する母親約1000万人が失業しており、昨年の同時期よりも約140万人多い。(ブルームバーグ Nic Querolo)

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