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気候変動サミット 日本は近く新目標表明 脱炭素進め投資呼び込み

 菅義偉首相はバイデン米大統領主催の気候変動サミットに合わせ、日本の2030(令和12)年度の温室効果ガス排出量の新たな国別削減目標(NDC)を表明する見通しだ。現在の「13年度比26%減」からどの程度引き上げるかが焦点となる。

 首相は昨年10月の所信表明演説で、50年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の目標を発表した。首相は周囲に「日本人は目標を決めれば懸命に取り組む。産業構造を大胆に転換する必要がある」と語る。

 日本は人口減少が進み、優位だった先端技術の研究・開発でも中国が猛追する。世界3位の経済大国の地位を保つためには、世界的潮流である気候変動問題を主導し、3千兆円規模とされる世界の環境関連投資を呼び込む狙いがある。ただ、NDCを大幅に引き上げれば目標達成への道筋も険しくなる。

 脱炭素を進めるためにはCO2を排出しない再生可能エネルギーの拡大や原子力発電所再稼働の加速、洋上での風力発電の活用がカギを握る。だが、30年度まで残り9年しかない中、原発再稼働への理解を得るのは容易ではない。太陽光パネル増設や省エネ施設への設備投資は時間がかかり、電力料金上昇など企業と家計の負担増も伴う。自動車や半導体など主要企業の国外流出を招くとの懸念も根強い。

 豊富な天然資源がある米国や、積極的な再生エネの導入が進む欧州と比べ、日本は脱炭素化への転換が経済に与える影響が大きい。バイデン米政権は軍事や人権問題で中国と対立する一方、気候変動問題では協力を模索。世界のCO2排出量1位と2位である米国、中国の動向次第では日本が翻弄されるリスクもはらむ。

 一方、産業界の意向を重視するあまり、日本の新たな削減目標が先進7カ国(G7)に比べ見劣りすれば国際社会をリードすることは難しい。環境政策で日米欧の三極による対中包囲網を築きたい日本の戦略も揺らぐことになる。(小川真由美)

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