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温暖化対策への米復帰に歓迎の声 途上国からは警戒も

 【ワシントン=塩原永久】米国主催で22日開かれた気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)では、温暖化対策の国際協調に復帰し、思い切った対策を表明した米国について、「ゲームを一変」(ジョンソン英首相)させるものだと歓迎の声が出た。一方、新興国や発展途上国からは、先進国主導で厳しい対策を強いられることへの警戒感が再浮上している。

 「私たちは今、気候変動の嵐の中を航海している」

 太平洋上の島国、マーシャル諸島のカブア大統領は首脳会合で、そう語りかけた。海面上昇による国土水没の懸念もあり、カブア氏は「(温室効果ガスの)急な削減は負担が重すぎるという言い訳を何度も聞いてきた」と話し、会合の参加国に踏み込んだ対策実施を促した。

 米国は、温暖化対策に背を向けたトランプ政権から、国際協調を重視するバイデン政権に代わり、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰した。会合では、首脳らに1人5分程度の演説時間が割り当てられたが、「米国の復帰は喜ばしい」(南アフリカのラマポーザ大統領)と切り出す首脳もいた。

 ただ、温暖化対策で京都議定書(1997年採択)からパリ協定(2015年採択)へと続く国際交渉では、途上国が「発展の権利」を主張し、対策の強化を目指す先進国との間で摩擦が絶えなかった。

 米国のパリ協定復帰は、停滞していた取り組みを加速させる一方、従来の「先進国対途上国」の構図も再び浮かび上がらせている。

 ブラジルのボルソナロ大統領は22日、アマゾンの熱帯雨林での違法伐採を30年までに根絶すると表明したが、「発展の権利が実現されるべきだ」と再確認することを忘れなかった。新興国や途上国には、経済発展で先行した先進国こそが、排出削減で重い責務を負うべきだとの認識が根強い。

 こうした構図は貿易分野も同じだ。トランプ前政権は世界貿易機関(WTO)脱退を示唆したが、バイデン政権はWTO改革に前向きに関与する方針に転換。WTOを舞台とした通商問題では、産業補助金や知的財産権の扱いなどで厳格なルール順守を求める先進国に対し、産業基盤が弱い途上国は抵抗してきたため、米ワシントンの経済外交筋からは、「先進国と発展途上国の対立再燃が心配だ」との指摘も聞かれる。

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