国内

ワクチン接種、焦る首相 スピードアップに向け総務省に支援指示

 新型コロナウイルスワクチンの配送量が連休明けの10日から大幅に増え、各自治体で接種が本格化する。これまでワクチン接種の態勢構築は主に厚生労働省と河野太郎ワクチン担当相の直轄チームが担ってきたが、菅義偉(すが・よしひで)首相は接種スピードを加速させるため、総務省に自治体の支援を指示。自衛隊にも東京と大阪で大規模接種センターの運営にあたらせる。東京五輪の開幕まで2カ月余りに迫ったこともあり、政府は総力戦で挑む。

 「7月末を念頭に高齢者への接種を終えるように全力を尽くしていきたい」

 首相は4月30日、接種のスピードを加速させる考えを重ねて記者団に示した。

 首相が目標を実現するため、テコ入れするのが接種の実務にあたる自治体のサポートだ。今回、総務省に支援させるのは、普段から職員を派遣しており、接種にあたっての要望や現状を把握しやすいからだ。大規模接種センターで自衛隊の医官や看護官を活用するのも、自治体が集団接種のために確保した医療人材を回さずに大規模接種を実現する狙いを込めている。

 「首相は焦っている。頭の中のほとんどはワクチン接種のスピードアップのようだ」

 ある官邸関係者はこう指摘する。

 首相が焦る最大の要因は、急速に拡大する感染力の強い変異株の存在だろう。厚労省のまとめによると、全国の変異株陽性者(4月27日時点)は累計1万102人で、前週比で4186人増えている。

 このまま感染が拡大すれば、直前に控えた東京五輪やパラリンピックにも影響しかねない。「コロナに打ち勝った証し」と位置付け各国首脳に理解を得ただけに、不具合が生じれば国際的な信用にも傷がつく。

 それだけに、政府がワクチンにかける期待は大きい。接種が進む英国などでは感染や重症化を防ぐ調査結果が相次いでいることもあり、首相はワクチンをコロナ対策の「決め手」と位置付ける。変異株への効果も、河野氏は「今のところ有効だという情報がある」と語る。

 ワクチンは、今月10日と17日の週に計1872万回分を自治体に配送し、6月末までに高齢者約3600万人が2回接種できる数量の配送を終える計画だ。政府関係者によると、全国の1741市区町村のうち、首相が示した7月末までの高齢者接種完了を見通しているのは、約6割の1000超に上っているという。

 河野氏は今月5日のテレビ朝日番組で「かなり準備が整って、動いているところはたくさんある」と述べた。

 ただ、2月17日に始まった医療従事者約480万人のうち2回の接種が完了したのは、同月30日時点で約2割の104万2998人にとどまっている。政府の集計によると、1回目の接種を終えた高齢者は今月5日時点で約21万人で、全体の約6%にすぎない。

 接種の本格化を前に予約が殺到し、中断するトラブルも増えている。「7月末まで」という目標達成までの道のりは、依然険しいといえる。(大島悠亮)

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