国内

カリスマ広報が「炎上した商品」を翌年大ヒットさせた“攻めの戦略” (2/2ページ)

 ■「臭いものに蓋をしない」広報の戦略

 消費者に不安が広がっているから、おせち選びで失敗しないために、お試しおせちがお勧めだと強調したのです。

 これが予想外の大ヒット。事件が起きた次の年ならではの現象として、取材が殺到し、メディアも大いに取り上げてくれたのです。お試しおせちに誘発される形で、通常のおせち料理の売り上げもアップしました。

 リスクを背負って攻めた結果、おせちのPRは大成功したのです。結果として、消費者にも安心しておせち料理をインターネットで購入してもらえるようになったのではないでしょうか。

 どんなマイナスな要素でもプラスに変えられる、それがストーリーの力です。臭いものに蓋をして、なかったことにするより、むしろ負の事態にも真剣に向き合い、受け止めながらバネにしていくような戦略が広報には必要だと私は思います。

 ■商品の欠点は隠さず長所にする

 どんなサービスや商品にも、欠点は必ずあります。

 一昔前は、いいところばかりをアピールする誇大広告がメインで、それでもある程度はうまくいっていました。しかし今の消費者は、それを簡単に見抜きます。インターネットでほかの利用者の感想を確認できますし、他社の商品との比較なども簡単にできるからです。

 今は欠点を素直に認めて、それに伴うプラス要素を説明するほうが、消費者には企業の誠実さが伝わります。

 とはいえ、欠点を欠点のままで出しては、やはりマイナスのままです。そこで欠点を長所にするようなストーリーをつくるというプロセスが不可欠なのです。

 飲食店の口コミというと「食べログ」が有名ですが、実はぐるなびにも口コミは存在します。しかし、お店を陥れるような書き込みや否定的な投稿は事前にチェックして載せないようにしています。

 それをあたかも欠点であるかのように「食べログさんと違って、ぐるなびさんはいいコメントしか載せませんよね」と言う記者もいます。

 そんなとき、私はまず「そうですね」と素直に認めてしまいます。それがデメリットになるということもわかった上での判断です。

 素直に認めてから、「なぜぐるなびが、そういうサイトなのか」を説明します。

 そもそもぐるなびでは正式名称を「応援口コミ」と言います。つまり、応援していない口コミは載せないことが大前提なのです。

 そうしないと悪意や敵意のある書き込みがあったときに、店側の被害を防げません。ユーザーはお店を選ぶ際、どこの誰が言っているかわからない他人の口コミよりも、お店の正確な一次情報(場所、メニュー、値段など)を頼りにしています。ぐるなびにはそれがありますから、お店に対するポジティブな意見や感想だけがあれば十分なのです。

 ■「批判」とどう向き合うか

 けれども、ユーザー側の批判はすべて無視し、いいことばかりをサイトに載せるのかというと、そうではありません。

 ぐるなびではきちんと精査をした上で、批判的な意見も載せるようにしています。

 一例として、「前よりも味が落ちた」「先代と2代目の味が違う」などのコメントは掲載しています。

 ただ、それだけではお店の信頼が損なわれてしまいます。

 そのためにぐるなびでは、お客さまと飲食店、双方向のやりとりができるようにしました。

 つまりユーザーの口コミに対して、飲食店側が返答できるようにしたのです。これもほかのサイトとは違う大きなポイントと言えるでしょう。

 そもそも味の好みは人それぞれ。一方的に悪口を書かれるのは不公平でしょう。そのやりとりは計10回まででき、すべてサイト上に公開されます。

 ■「欠点」は「長所」に変えていく

 このように説明すれば、肯定的な口コミを優先して載せる理由について納得感が得られ、お店側が返答できるというシステムがプラス要素としてメディアに取り上げられる可能性もあるのです。

 たとえば、他社の商品にはこんな機能がついている、でもウチはついていない。

 そんなときは「確かに多くの機能はついていません。その代わりシンプルで使いやすく、コストも最低限に抑えました」とアピールできるでしょう。そういうストーリーのつくり方を常に考えて、特に競合が持っていない何かがあれば、そこを強調するのがポイントです。消費者もいいことだらけだと信用できません。

 欠点は隠すよりも長所に変えていくのが、これからの広報に必要なスキルなのです。

 

 栗田 朋一(くりた・ともかず)

 PRacademy代表取締役

 1971年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。明治学院大学社会学部卒。歴史テーマパーク「日光江戸村」を運営する大新東で広報を担当し、江戸村及びグループ会社全体のコーポレートPRを手がける。2003年に電通パブリックリレーションズに入社。その後、07年にぐるなびに転職し、広報グループ長を務める。現在は、自身で立ち上げたPRacademyの代表取締役を務める。著書に、『現場の担当者2500人からナマで聞いた 広報のお悩み相談室』(朝日新聞出版)がある。

 

 (PRacademy代表取締役 栗田 朋一)(PRESIDENT Online)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus