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菅義偉総理は「東京五輪実施」の意義を明確に 中華人民共和国は“勝ち組”か (1/2ページ)

高井康行
高井康行

 独裁主義国家の対極にある日本

 最近、英米から、新型コロナウイルスは武漢のウイルス研究所から流出したとする説が再び主張されてきている。しかし、当の中華人民共和国は他国に先駆けて新型コロナの蔓延を終息させたと称し、経済活動も再開させているばかりか、自国産ワクチンを他国に提供し、それによって自国の影響力を拡大しようとしている。

 欧米の民主主義国においては、ワクチン接種が進んだ最近でこそ、新型コロナの蔓延が収まりつつあるが、公表数値で見る限り、中華人民共和国に比べ、感染者数、死者数ともに圧倒的に多い。

 それらの状況を見ていると、まるで、新型コロナとの戦いにおける勝ち組は中華人民共和国のように思えてくる。一部からは独裁主義あるいは権威主義の方が、効率的かつ効果的に危機に対処できるという点で民主主義に勝っているという意見も出てくるであろう。

 一方、日本は、憲法に非常事態条項を持たないため、非常事態、緊急事態においても国民の人権を制約することが難しい。いわゆる特別措置法においても、当局は、各種の要請が出来るにすぎず、その要請に応じなかった場合でも刑罰を科すことはできない(「過料」は行政罰であって刑罰ではない)。

 その意味では、日本は、独裁主義国家、権威主義国家の対極にあると言ってもよい。このように、極めて「緩い」制度しかない国でありながら、その感染者数、死者数は欧米諸国に比べれば圧倒的に少ない。

 ただ、「緩い」制度故(ゆえ)に、政策の徹底を欠くことになり、今は3度目の緊急事態宣言下にある。そして、7月23日にはオリンピックを、8月24日にはパラリンピックを迎えようとしている。当然のことながら、オリンピック・パラリンピック中止を求める声が上がっている。

 その主な理由として、海外から多くの選手や関係者が入国したり、観戦のために国内の人流が増えたりすることによって国内における新型コロナ(ことに変異株)の蔓延が加速される虞(おそれ)があること、それによって国内の医療体制がより一層逼迫する虞があることなどが挙げられている。

 それに対し、菅義偉総理は「安心、安全な五輪を行う」と繰り返すだけで、この時期に東京でオリンピック・パラリンピックを開催する意義を積極的に説こうとはしない。

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