海外情勢

“ぼったくり男爵”が気にするのは米テレビ局だけ IOCが絶対に五輪開催をあきらめないワケ (2/4ページ)

 ■長期スパンで契約するIOCの狙いは?

 なぜこれほどの長期スパンで放送権を契約する必要があるのか。そこにはIOCが安定的に収益を確保したいという狙いがありそうだ。

 五輪開催地の選定は、少なくとも2022年冬季大会の誘致合戦まで、「公式な誘致活動を経て、開催の7年前にIOC理事会で決定する」という方法で続いてきた。あのキャッチフレーズ「お・も・て・な・し」で勝ち取った東京五輪だが、これは2013年9月、ブエノスアイレスで開かれた理事会の席上で決まっている。7年前というタイムスパンは微妙で、「次の大会開催地は決まっているが、さらにその次は未定」という格好が続いてきたわけだ。

 したがって、東京五輪が決まる直前の2012年ロンドン大会では、日本から多数の誘致関係者が訪英し、IOC理事などの要人に売り込みをかけた。東京五輪組織委会長の橋本聖子氏は当時日本代表チームの副団長だったが、日本が誘致拠点としたロンドン市内の臨時施設「ジャパンハウス」に同氏が出入りしていた様子を、ロンドン市民の筆者も目撃している。

 ■誘致の費用がかかりすぎ、賄賂の疑惑も…

 ところが、こうした公式誘致活動は、名乗り出る都市への金銭的負担が大きすぎるという意見のほか、決定の投票権を持つIOC理事らへの賄賂の疑いが何度となく浮上するなど、マイナス面ばかり注目されるようになった。多くの国々が「理事への付け届けが面倒」、あるいは「大会開催自体がもはや環境保護の姿勢から見ると逆行している」などと判断したこともあり、近年は招致熱が一気に下がってきている。

 五輪の火を消したくないIOCは、こうした選定方法を断念。2024年大会以降については、コンペ方式をやめて書類選考や個別視察などを通じて開催地を指名する「一本釣り選定」に切り替えた。先日、2032年夏季五輪の開催地にオーストラリア東部のブリスベンが内定したのも、この方式を踏襲している。

 ■「11年先」を今決めるのも巨額契約のため

 ここで米テレビ局NBCとの関係に戻ろう。IOCは、それまでの「7年前スキーム」とは全く違うタイムフレームで、NBCと2022年~2032年大会までの先行契約を結んだ。契約時の2014年からみて18年後に当たる2032年大会の放送権までコミットしたのだから、IOCは「確実に催行してくれる都市」をより吟味した上で、より早い時期に開催地を発表する必要に迫られている。

 言うまでもなく、今回のコロナ禍による延期はIOCとして予期できない大きなトラブルだったはずだ。東京組織委がIOCに対して支払うライセンス料は、延期が決定した際に返金し、全て組織委側に残すことが決まっている。

 そうした「収入放棄」をしながらも、五輪開催を続けていかねばならないIOCとしては、最大スポンサーであるNBCの顔色を伺いながら、11年も先のブリスベン開催をこのタイミングで内定した。コンペ式から指名制という方針転換は、五輪を確実に催行し、巨額のカネを生み出す体制をより盤石なものにしたということだろう。

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