田中秀臣の超経済学

コロナ情報操作と香港の言論弾圧、“中共リスク”を考える (1/2ページ)

田中秀臣
田中秀臣

100周年祝賀よりコロナ対応を

 ワクチン接種は順調に推移している。当初は、「1日100万接種はできない」「(菅義偉首相は)党首討論で6月末までに4000万回接種を実現すると言っているが机上の空論」とする発言が多かったが、それぞれの目標をクリアしている。ワクチン接種がすすみ、感染での入院や重傷者が激減していけば、それだけ医療支援体制が危機に陥る可能性が低くなる。医療支援体制が大丈夫であれば、緊急事態宣言などは回避できる。

 すなわち、経済的な負担をこれ以上、国民がコロナ禍で背負う必要がなくなる。言ってみれば「ワクチン接種は事実上の経済政策」なのだ。このことは国際通貨基金(IMF)なども同様の見解を採用している。経済の再開にはワクチン接種がまず最大の前提なのだ。その上で、さらに有効な経済対策を行うことが必要だ。前回の連載で書いたが、最低でも30兆円の補正予算が望ましい。

 日本だけでなく、世界の経済はこの1年半で大きく失速しており、年内にコロナ禍以前の経済状況に戻るのは難しいだろう。感染による死者は390万人以上、感染者は1億8千万人以上とされている。このパンデミック(世界的大流行)の原因は、誰がみても中国の政治的な閉鎖性の産物であることは明白だ。要するに中国共産党の事実上の大失政である。新型コロナの武漢での感染拡大について、中国共産党は情報のコントロールを行い、世界に対して情報を閉ざした。その罪は極めて重い。中国共産党は、7月に結党100周年を迎えるが、そんな祝賀よりも、パンデミックの原因について、国際社会からの要請に対して真摯に対応すべきだ。

 トランプ政権の終盤で、ポンペオ国務長官(当時)が、武漢研究所からの新型コロナ・ウイルス流出説を指摘し、調査をすすめた。だが当時は、この動きは「陰謀論」扱いか、反中国の政治的な動きだと見なされていたと思う。

 例えば、世界保健機関(WHO)の武漢などでの調査では、動物から人間への感染が最も可能性が高いと結論され、ウイルスの研究所からの流出説はほぼ否定された。だが、そもそもこのWHOの調査自体が中国の非協力的な姿勢で不十分なものであった。

 この状況に大きな変化があったのは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどが武漢研究所流出の可能性を大々的に報道したのがきっかけだ。2019年秋に新型コロナでの病状に似た同研究所職員が複数入院したなどとする米情報機関がソースとなる報道だった。バイデン政権もトランプ政権時での調査打ち切りから一転して、再調査に乗り出すことで、いままで「陰謀説」扱いされていた武漢研究所流出説が一気に信ぴょう性を増してきた。

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