海外情勢

最低法人税率「15%以上」合意 G20財務相会合が閉幕

 【ベネチア=三井美奈】日米欧の先進国と新興国による20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は10日、共同声明を採択して閉幕した。法人税の引き下げ競争に歯止めをかけるために「15%以上」とする最低税率の導入で合意。巨大IT企業の税逃れを防止する「デジタル課税」でも一致し、焦点だった国際課税の強化は10月の最終決着に向けて前進した形だ。

 声明は税率をめぐる国際ルール作りに向け、「10月の次回会合までに、残された課題を迅速に解決し、最終化することを求める」と明記。議長国イタリアのフランコ経済財務相は会議後の記者会見で、「歴史的合意だ。強い政治的意思を示すことができた」と成果を誇り、10月の最終合意に向けて意欲を示した。

 国際課税の強化は経済協力開発機構(OECD)が1日に大枠合意しており、2023年の実施を目指す。賛同国は日本や米国、中国など132カ国・地域に上る。共同声明は「国際合意にまだ参加していない全ての参加国・地域に対して、国際合意に参加するよう招請する」と呼びかけており、フランコ氏は記者会見で、G20が一致した姿勢を示すことで、ハンガリー、エストニア、アイルランドなど賛同していない国々に協力を促した。

 米国のイエレン財務長官は声明を発表し、「世界は、税の引き下げ競争を終える用意ができている。最終合意に向けて迅速に動かねばならない」と主張。フランスのルメール経済・財務相は閉幕を前に、「OECDの合意が発効され次第、独自のデジタル課税措置を取り除く」と記者団に語った。

 共同声明は、脱炭素化を進めるため、持続可能なインフラや革新的技術への投資を促す方針を明記。新型コロナウイルス禍をめぐり、ワクチン製造や分配で途上国を支援することも確認した。会議では、途上国の債務返済の猶予措置も議題になり、日本は途上国へ不透明な貸し付けを行う中国を念頭に、支援継続の前提として債務実態の透明化を求めたとみられる。

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