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「テスラは電気自動車の会社ではない」5年前にイーロン・マスクが示した驚きのビジョン (1/3ページ)

 電気自動車大手のテスラなどを創業したイーロン・マスクは「天才経営者」と呼ばれる。いったいどこがすごいのか。クリエイティブディレクターの小西利行氏は「イーロン・マスクの未来を見通す力とビジョンをつくる力は本当にすごい。とりわけ2016年に『テスラをエネルギー企業にする』とぶち上げたときには驚かされた」という--。

 ※本稿は、小西利行『プレゼン思考』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

 ■「超努力系まぐれ当たり経営者」イーロン・マスクの凄み

 そして今、ビジョンの提示力という意味で僕がもっとも興味を持っているのが、イーロン・マスクという人物です。

 イーロン・マスクは、皆さんもご存じの電気自動車「テスラ」や、宇宙開発事業の「スペースX」、さらに「ソーラーシティ」などを指揮する超有名経営者ですが、実は、最初の会社創業から今まで、まさにギリギリでなんとか生き延びてきた「超努力系まぐれ当たり経営者」でもあります。

 すでに多くの出版物や記事(※)でも取り上げられていますが、イーロンは、事業を興す度に無謀とも思えるビジョンを掲げ、そこに殺人的なハードワークで臨み、自己資金を惜しみなく投入することで圧倒的なリーダーシップを発揮し、常に破産や倒産ギリギリの土壇場で起死回生の逆転満塁ホームランを打ってきた奇跡の人です。

 先ほど挙げたような天才的な経営者たちとは違い、まったく今っぽくない、泥臭い仕事をする経営者だとも言えるでしょう。そしてそんな姿にこそ、僕は強く興味を惹かれるのです。

 ただ、僕がイーロン・マスクに惹かれる一番の理由は、彼が常に多くの人を巻き込み、そして常に、起死回生の一発を打つ準備をしているからです。そしてそのエンジンこそが、彼の描く「ビジョン」なのです。

 ※『Elon Musk:Tesla,SpaceX,and the Quest for the Fantastic Future』

 ■未来を見通す力とビジョンをつくる力に驚愕

 いまでこそ、トヨタの時価総額を抜くニュースが出るほど有名となった「テスラ」も、彼が参加した当時は、夢のまた夢の事業とこき下ろされて、誰からも相手にされていませんでした。

 電気自動車も自動運転も、当時はまだSFの領域を超えておらず、まさかこんなにも一般的に普及し始めると思っていなかったのです。

 でも、彼はそれをまるで「すぐそこにある未来」のように語り、そして人を説得して回っています。夢を夢として語らず、必ず実現するものとして語る。そのために血のにじむような努力で開発を行って実証し、徹底的に地道な営業活動で広めていくのです。

 ビジョンはカンタンに広まるものではありません。そこに熱量と努力が必要になる。それを教えてくれたのがイーロン・マスクでした。

 僕は、これまでに何度も、彼の未来を見通す力とビジョンをつくる力に驚愕してきましたが、その中でも一番なのは、2016年の「マスタープラン・パート2( Master Plan, Part Deux)」というプレゼンテーションでした。なぜなら、その場で彼が「テスラをエネルギー企業にする」というビジョンをぶち上げたからです。

 ■クルマ会社から、再生可能エネルギー企業へ

 このときのプレゼンでは他にも、初のコンパクトSUVや「テスラ・セミ」というトラック、さらに自社製品の完全自動運転化などの発表もしていましたが、「Energy Positive」(太陽光パネルで発電し、バッテリーとテスラで蓄電し、運転や家庭で電気を使っても、エネルギーが余る状態)の発表で、僕には他が霞んで見えました。

 それはつまり、電気を使う会社から、電気を生む会社になることを意味していたからです。

 この、エネルギー企業へ転換するというビジョンは、前年に買収している「SolarCity」と合わさって、実現性を帯びていました。いや、もはや、実現するかどうかは関係なく、会場はイーロンの熱量に押されてワクワクしてしまっていました。

 世界中の屋根にソーラーパネルを持ち、世界中を走り回る大量のバッテリー(クルマ)と、世界中至るところにある充電施設(スーパーチャージャー)も持ち、さらに、世界最大級の発電と蓄電施設までも持った巨大エネルギー企業の誕生が見えたのです。クルマ会社が、石油やガスや原子力を凌駕する、再生可能エネルギー企業となるのです。

 これはまさに、テスラの社員や株主はもちろん、世界中のメディアから、全世界のテスラオーナー(僕もそうです!)までも巻き込む巨大なビジョンの提示であり、ここへ向けてどんどん技術やアイデアをつくっていこうという号令であったとも思います。

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