国内

「電気代は2030年まで毎年必ず高くなる」毎月こっそり徴収される“隠れ税金”の正体 (2/2ページ)

 ■買取価格は下がっても、賦課金は2030年まで上がる

 導入当初の買取価格こそ高いものの、価格は年々緩やかに下げる制度設計になっている。事実、先ほど紹介したように初年度(2012年度)は40円だった産業用太陽光の買取価格は、今年度第1四半期は11円が上限になっている。

 もちろん気象などの自然条件に発電が左右される特性はあるものの、発電コストだけで見れば、この買取価格はすでに他の電源と同等程度、あるいは安い水準になっている。

 再エネ業界も徐々に淘汰が進展し、まっとうな経営をしている筋肉質な企業が生き残る格好になってきている。また、大規模造成を伴う発電所開発は採算がとれにくくなり、各種問題はようやく是正されつつある。

 だが、それとは逆に、電気の利用者が負担する賦課金は当面上がり続ける。制度上2030年までは上がり続けるのだ。

 その理由を簡潔に言えば、再エネの導入時のコスト負担を、将来に先送りにする設計にしたためだ。

 固定買取制度の下では、産業用の発電では20年間の買取が約束されている。したがって、初年度1kWhあたり40円という高い価格設定で政府が買取保証した分、利用者の負担は20年間続くことになっている。

 そして、毎年の負担分が上乗せされていく。その間、いくら再エネの発電コストが安くなろうが、導入された再エネの量が増えれば増えるほど、この再エネ賦課金は増え続けることになる。それは制度上、そのように設計されているので当然の帰結である。電力中央研究所によれば、2030年時点で1kWhあたり最大4.1円になるという。

 ■2030年以降も再エネ賦課金は上がる恐れも

 そうなると気になるのが、ピークを越えた2030年以降の賦課金だ。政府の元々の試算では、2030年ごろをピークに再エネ賦課金が下がる想定だ。

 しかし、いまは制度が設計された当時と前提が異なっており、完全な脱炭素時代に突入をしている。2050年カーボンニュートラルに向けては再エネの大幅導入なくして達成は難しく、現在素案が発表されているエネルギー基本計画でも2030年に向けて再エネを大幅に増やすことが盛り込まれている。

 2014年度から洋上風力発電プロジェクトの電力に対する固定価格買取制度が始まった。この構図は太陽光の初期と同じであり、コストの低減が図られるまでは参入を促進するため、買取単価を高く設定をせざるを得ない。2021年度の単価はいずれも30円を超えている。

 これらの再エネの導入が進んだ場合、再エネ賦課金の上昇要因となる。つまり、元々予定されていた2030年以降の負担金の低減のスピードを上回る速度で新規の再エネ導入の負担増が生じた場合、2030年以降も継続して再エネ賦課金は上昇する恐れがある。

 ■太陽光の発電コストは劇的に低下しているが……

 賦課金は2030年までは確実に上がり、少なからず家計を圧迫することは確かだ。

 しかし近年、太陽光の発電コストは劇的な低下し、世界の発電コストの平均は10年間で5分の1以下となった。まさに太陽光発電は「安価な電力源」へと成長を遂げた。

 経済産業省は、このほど2030年の電源別発電コスト試算の結果を公表した。

 これによると、太陽光の発電コストは事業用で8円台前半~11円台後半(円/kWh)、住宅用で9円台後半~14円台前半。対して、既存の原子力は11円台後半~、LNG火力は10円台後半~14円台前半、石炭火力は13円台後半~22円台前半と、太陽光発電の優位性を裏付ける結果となった。

 太陽光発電のコスト自体は今後も下がると見込まれており、家計の電気代を押し下げる効果が期待できる。しかし、これまで述べてきたように年々上がり続ける再エネ賦課金を利用明細で目にするたび、利用者は再エネに対する不信感を募らせるだろう。

 再エネ賦課金の制度が致命的な欠陥を抱えているとしたら、まさにこの点である。

 ■最大の問題は“ブラックボックス化した電気料金”

 そもそもの問題をたどれば、電力料金がブラックボックス化していることにたどり着く。

 インフラ建設には初期投資が必ずかかるものであり、それは何も再エネだけではなく、これまでも電気代に転嫁されてきた。にもかかわらず再エネだけ賦課金という形で負担金が明記され、火力や原子力のコスト分はひっそりと電気代に上乗せされている。

 特に原子力は、安全確保の追加費用や事故リスクの対応費用などのコストがかかる。火力も世界的な脱炭素の流れの中で、CO2排出対策の費用はかさむことが見込まれる。

 電力料金の見える化が進めば、発電コスト減が続く再エネの恩恵を利用者も認識できる。また、どの電源を選択するのが安価で適切か、利用者の理解は一層進むことになるだろう。

 ■安価になった再エネの恩恵を享受できる仕組みが必要だ

 制度設計上、これからも再エネ賦課金が上がるという報道は毎年続くことになる。指摘したように、必ず上がるように設計されていること自体も問題であるが、真に問題なのは、そうした表層的なところに大事な事実が隠れてしまっていることだ。

 電気料金がブラックボックス化していることや、再エネコストの低下を利用者が実感しにくいというのも根本的な問題だ。また、脱炭素時代に再エネにシフトしていくことについて国民理解を得られにくい仕組みになっていることも今後大きな問題となるだろう。

 日本は資源が乏しい。年によっては年間25兆円を超えるお金を、日本は化石燃料の調達のために海外に支払っている。また、エネルギー供給の外国依存は極めて高く、エネルギー安全保障上の脆弱性も抱えている。

 再エネの拡充が進み、エネルギー自給率が向上すれば、これまで海外に支払ってきた国内資産が国内に循環することにもつながる。再エネ賦課金にばかり焦点が当たってしまえば、こういう大局は見えてこない。

 脱炭素化の国際的な流れは決定的だ。利用者の負担軽減を念頭に、これからについては国民負担の在り方を見直すとともに、ブラックボックス化した電気料金を見える化するなどの改善が必要だ。再エネの恩恵を、多くの国民に享受されてこそ、脱炭素化ははじめて実現しうると考える。

 

 前田 雄大(まえだ・ゆうだい)

 元外務省職員、EnergyShift発行人兼統括編集長(afterFITメディア事業部長)

 1984年生まれ。2007年、東京大学経済学部経営学科を卒業後、外務省入省。開発協力、原子力、大臣官房業務などを経て、2017年から気候変動を担当。G20大阪サミットの成功に貢献。パリ協定に基づく成長戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。2020年より現職。日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関「富士山会合ヤング・フォーラム」のフェローとしても現在活動中。自身が編集長を務める脱炭素メディア「EnergyShift」、YouTubeチャンネル「エナシフTV」で情報を発信している。

 

 (元外務省職員、EnergyShift発行人兼統括編集長(afterFITメディア事業部長) 前田 雄大)(PRESIDENT Online)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus