国内

総裁選を追う…改革派は誰か 首相の座かけ乱戦開幕

 17日に告示された自民党総裁選。主要5派閥が首相の菅義偉支持を決めた昨年から一転、結末が予想できない乱戦が始まった。

 「異端児の強い個性を」午前9時、河野陣営

 ワクチン担当相の河野太郎の出陣式はオンライン形式で行われた。

 「広く国民のご支援をいただき、戦いに勝っていきたい」。河野は笑みを一切浮かべずに語った。陣営の選挙対策本部長の元金融担当相、伊藤達也は「異端児とも呼ばれる河野さんの強い個性を私たちが支えていこう」と呼び掛けた。

 河野は元幹事長の石破茂と組んだ。石破は今回の総裁選を「古い自民党と国民の戦い」と位置づけ、前首相の安倍晋三や副総理の麻生太郎の政敵でもある。国会議員票が盤石とはいえない河野の言葉には、国民人気を武器に、衆院選を控えた国会議員の票を獲得したいとの思いがにじむ。

 「やっとスタートラインに」9時、野田陣営

 党本部の一室で行われた幹事長代行の野田聖子の出陣式は安堵(あんど)感が漂った。過去3度、出馬を目指したものの推薦人が集まらずに断念したからだ。

 選対本部長の厚生労働副大臣、三原じゅん子は「やっとスタートラインに立たせていただくことができた」。野田は「無謀だ、やめろと何度も言われたが、チャレンジし続けてきた」と感無量の様子で語った。

 「日本を守るために」11時、高市陣営

 「日本を守るために、誰が一番ふさわしいか。高市を応援しているグループは結束力は一番ある!」。国会内の大会議室で開いた前総務相、高市早苗の出陣式で、選対本部長の元拉致問題担当相、古屋圭司が叫んだ。保守色の強い議員が多く参加した。

 高市は「こういう国家経営を行うべきだという政策に賛同していただいた最も強い同志だ」と強調した。背後には国会議員約60人が陣取り、その言葉に拍手や声援を送った。熱気は4陣営で一番だった。

 「後から改革を述べるなら…」11時半、岸田陣営

 国会内のホールで前政調会長、岸田文雄の出陣式が始まった。「後から(党の)改革を述べることは誰にだってできます」。こうあいさつしたのは選対顧問の税調会長、甘利明だ。麻生派(志公会)の後輩でもある河野への批判がにじむ。役員任期制限を打ち出し、幹事長の二階俊博を標的にしたと党内を騒がせた岸田こそが、党改革派だというわけだ。

 岸田は「時代が求めているリーダーは私だ」と自信たっぷりにアピールした。煮え切らない、話がつまらないと評されてきたが、元防衛相の小野寺五典は「力強く、首相のイメージで見えた」と語った。

 「自民を変えてくれ」午後2時半、河野陣営

 河野が、国会内の会議室に駆け付けた。陣営が開いた激励の会合。にこやかに出迎えたのは石破と環境相の小泉進次郎だった。

 「国民の支持をバックに…」。河野が改めて決意を語ると、石破は「自民党を変えてくれ、日本を変えてくれ(と願う)国民とともに勝利する」と応じた。その後、3人は報道陣の前に並んでガッツポーズを披露した。安倍に近い議員の一人は「河野さんは完全にあちら側に行ってしまったのかな」と首をかしげた。

 朝から沈黙を守っていた菅は、午後6時に首相官邸を退邸する際、記者団の取材に応じた。

 「新型コロナウイルス対策は継続が極めて大事だ。河野さんを支持します」。安倍、麻生、甘利と盟友関係を築いていた男の朴訥(ぼくとつ)としながらも明確な表明は、政界への小さくない波紋となる。=敬称略(田中一世)

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