国内

トヨタ系労組票の行方 立民候補は党派色薄める

 旧民主党系を支援してきた全トヨタ労働組合連合会(全ト、約35万人)が次期衆院選で、愛知11区(豊田市など)の組織内候補、古本伸一郎前衆院議員の擁立を見送り、自民党との関係悪化を避けた問題は、周辺選挙区にも影響を及ぼしている。「自主投票」の意思表示とも受け取れるだけに、立憲民主党の候補は党派色を薄めて選挙戦に臨み、支援を求めている。

 愛知12区の立民前職は23日の演説会で、古本氏から「これからお前が自動車産業を背負ってくれ」と後を託されたと強調した。演説会の応援弁士は自身が所属する立民幹部ではなく、全トと関係が良好な国民民主党の浜口誠参院議員だった。

 浜口氏は全ト出身で、産業別労組(産別)自動車総連の組織内議員。立民前職を「同志」と呼びながら11区の問題に触れて「不安の声は十分承知している。だが、築いてきた信頼関係は1ミリも揺るがない」と語り、政党ではなく個人の関係での支援を強調した。

 全ト加盟の各労組には、共産党と共闘する立民への嫌悪感が広がっている。立民前職は選挙カーやポスターに党名を記さず、「祈必勝」と大書された為書(ためがき)も、枝野幸男代表や福山哲郎幹事長から送られたものは「余計な波紋を呼ぶ」(陣営関係者)として、選挙事務所に張り出していない。

 隣の愛知13区では、立民前職支持で労組票の取りまとめに動く地方議員の一人が「全トが自民に遠慮している以上、私も表では活動しにくい」と語る。選挙事務所では、壁面の一番上に連合、続いて自動車総連など産別の地方組織の推薦状を張り、一番下に枝野氏名義の党公認証がある。

 一方の自民は、全トに接近する動きを見せている。愛知県連は政策協定を持ちかけており、8月には国会議員と全ト幹部との意見交換会を開いた。岸田文雄首相は今月21日、12区と13区で街頭演説し、地域の自動車産業に触れて「これからも日本の経済のエンジンとして活躍してほしい」などとアピールした。

 自民の県連幹部は、トヨタ自動車のテストコース整備を実現するため、自民県議らが行政との調整に動いたと指摘。「それなのに衆院選では立民を推し、自民候補を落選させるというのは筋が通らない」と語る。(田中一世)

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