海外情勢

「国中停電してしまう」グレタさんから距離を置くドイツの“大人の事情” (1/3ページ)

 ■「こんな流れになってしまった」と議長が涙の謝罪

 11月13日夜(日本時間14日早朝)、会期が2日延長されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)がようやく閉会した。今回は英国が議長国のため、会議はスコットランドのグラスゴーで開かれていた。議長を務めた英国のシャーマ前ビジネス相は、最後の本会議で成果文書「グラスゴー気候協定」を採択するときのスピーチで、「こんな流れになってしまった」ことを謝罪し、無念の涙に声を詰まらせた。

 すると、それに気づいた参加者の拍手が沸き起こり、満場の拍手は、しばらくしてシャーマ議長が気を取り直し、「先に進めなければなりません」と言うまで続いた。最近、そもそもCOP自体が茶番という評価をよく聞くだけに、シャーマ議長の真面目そうな風貌も相まって、私にはこのシーンが茶番の印象にダメ押しをしてしまったように見えた。

 さて、翌日の独主要メディアは、このCOPの成果文書採択の話題で満載。Fridays for Futureのグレタ・トゥンベリ氏や、国際環境活動グループのコメントなどを用いて厳しい批判が展開された。一方、会議を議長国として成功に落とし込みたいジョンソン英首相は、「合意は大きな前進」と評価。また、EUの欧州委員会は「パリ協定は維持された」としてメンツを保つことに終始した。ただし、彼らにしてみても、「まだ十分でない」ことだけは認めている。

 ■石炭火力発電所の「段階的な廃止」にインドと中国が反発

 では、いったいシャーマ議長の言った「こんな流れ」とは、どんな流れだったのか? 具体的に言うと、最初、採択されるはずだった石炭火力発電所の「段階的な廃止(phase out)」が、「段階的な削減(phase down)」にすり替わってしまったことを指す。議長国の英国が提出していた文書案の採択まであと数時間というところで、インド代表が猛烈に反発し、そのインドを中国が支持したため、結局、変えざるを得なくなったのである。そもそも、中国とインドはCO2の大量排出国だから、彼らが首を縦に振らないことを言っても意味がない。

 やはり大量排出国である米国からはバイデン大統領が出席し、積極的な姿勢を見せたが、彼の場合、帰国してから何を批准できるのか心許(もと)ない。また、ロシアはというと、プーチン大統領が欠席した。ちなみに、世界のCO2排出は、この4国で全体の半分を超えている。

 言うまでもないが、現在、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるため、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが、世界共通の大目標となっている。ただ、この運動をよくよく見ると、「温暖化を止めなければならない」という目標は同じでも、主張や理由はさまざまだ。

 ■ガソリン車や飛行機に乗るな、肉は食べるな…

 まず、グレタ・トゥンベリ氏が創立者であるFridays for Futureが言っているのは、温暖化を今すぐに止めないと、異常気象に歯止めがかからず、地球はまもなく人間の住めない惑星になってしまうというもの。だから、人間が地球から自然を収奪するのをやめなければならない。

 そして、世界の多くの人々がこの考え方に啓発され、「惑星を救う」ために連帯し始めた。彼らの行動を具体的に言うと、ガソリン車とディーゼル車に乗るな、飛行機や豪華船に乗るな、メタンガス発生の温床は酪農であるから肉は食べるな、新品の服は買うな。あるいは、石炭火力発電を即刻停止させろ。要約すれば、豊かさはもう要らないということか。

 地球上には、飛行機はもとより、ガソリン車にも乗れず、肉も食べられず、新品の服も買えず、火力発電所どころか電気なしで暮らしている人が、14億人もいるのだそうだ。また、まきなどで調理や暖をとらなければならない人が30億人。呼吸器に対する健康被害は膨大だ。豊かな国の子供たちとは別世界の話だ。

 ■過激派グループは刑務所行きも辞さない

 一方、同じ環境団体でも、少し違った目標を掲げるグループもある。彼らに言わせれば、現在の気候危機は、人間が地球から自然や資源を搾取したのではなく、先進国がその他の国々から富を収奪してきた結果なのだ。つまり、それに対する対策は、先進国による発展途上国への援助。つまり、国連の理念と同じである。国連のグテレス事務総長が以前から気候危機を強く訴え、また、各種環境運動を高く評価し、今回のCOP26の成果文書に対しても「十分でない」という評価を下しているのは当然の結果だ。

 また、環境改善よりも、システムチェンジという政治目標が前面に出ている極左グループも多い。例えば2018年に英国で設立されたエクスティンクション・レベリオンというグループの抗議活動は非暴力的という触れ込みだが、ロンドン市内の交通の要所を占拠して市民の交通を10日間にもわたって妨害したり、デモよりも効果のある方法として、「400人が刑務所に行くべき」などと主張したり、すこぶる過激だ。

 実際に2019年の活動だけで、1000人以上が逮捕されたというが、刑務所に行くためには、当然のことながら、それなりの罪を犯さなければならないことは自明の理。ちなみに、抗議活動のパフォーマンス時に彼らが着る真紅の衣装がメチャクチャ怖い。

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