日銀総裁に求める資質とは? 元日銀審議委員・中原伸之氏に聞く

2013.2.21 08:30

 世界最先端の金融理論と実践が必要

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が注目を集める中、安倍首相の金融政策に関するブレーンの一人、中原伸之元日銀審議委員がフジサンケイビジネスアイのインタビューに応じ、次期日銀総裁に求める資質などについて語った。(尾崎良樹)

 --安倍首相が掲げる「大胆な金融緩和」が市場に好感されている

 「先の衆院選で、国民が15年にわたるデフレから脱却したいと立ち上がった。中央銀行の政策が選挙の争点になることは世界でもまれだろうが、日銀はその『国民投票』で完敗した。特に、2008年秋のリーマン・ショック後、世界で金融緩和競争が行われてきたのに日銀は取り残されていた。こうした現状に国民の怒りが爆発した」

 --日銀の問題点は

 「日銀の金融政策がうまくいったかどうかは、物価の安定のみならず景気・経済が良くなったかというのが判断基準だ。特にリーマン・ショック後は信じられないような急速な円高がもたらされた。日本の輸出産業があわや総崩れになる危機一髪のところまできていたわけだ。でも日銀にはまったく責任感がなく、『国民投票』に敗れたという意識すらない」

 --1月の政府・日銀による共同声明は物価目標2%を宣言した

 「日銀は、物価目標の責任は自分たちだけが負うのではないという点に抵抗していた。今でも日銀側は記者会見や国会答弁で逃げ回っているが、首相が国会答弁で繰り返しているように日銀には物価目標に対する全面的な責任がある」

 --次期日銀総裁に求める資質は

 「世界最先端の金融理論とその実践だ。レジームチェンジ(体制転換)が必要である。物価目標2%に向けて、総裁候補者がこれまでどのような専門的実績があるのか、また、これからどういう政策手段を講じていくのかだ」

 --日銀法改正の必要性は

 「いま何が起こっているかというと、日銀のサボタージュだ。次の日銀正副総裁が決まるまでは何もしないという国民に対する不遜な行動だ。今回、正副総裁を交代しても駄目だったら日銀法を改正すればいい。首相の金融政策に対する考えはまったくぶれていない。これから当然、テーマとして残っていく話だ」

【プロフィル】中原伸之(なかはら・のぶゆき) 1957年東大経卒。59年米ハーバード大大学院修了、東亜燃料工業(現・東燃ゼネラル石油)入社。86年社長。98年日銀審議委員、2002年金融庁顧問。78歳、東京都出身。

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